第二章 亜人の国「清廉なる魔王③」
威厳とでも言うべきか、なかなかの存在感を醸し出す御仁だった。
さすがは国主を務める王。
重苦しいと言うほどではないが、圧を感じる。
踝丈のマントは、濃紺色に金の縁取りがされており、黄金の王冠には美しい装飾と、赤い大きな宝石が埋めこまれていた。
典型的な王様の姿だが、さすが現役の本職。地球にいる名ばかりの王とは一線を画している。
そして、その脇に控えるのは···。
俺は咄嗟に膝をつき、騎士達に倣って臣下の礼をとる。
別に国王の臣下ではないが、セインと並んでいるリーナの顔が見えたからだ。
マスクとカツラで顔を隠しているとは言え、少し離れた位置から見ると背丈や体格、雰囲気などで正体がバレやすかったりする。
特にリーナは、非常識なほど勘が鋭かったりするので要注意だった。
じーっ。
サッと目線をやると、明らかに俺を注視しているリーナがいた。
じーっ。
···こっちを見るな。
じーっ。
「····························。」
下唇に指をあてて、上体を左右に振りながら俺を見るリーナ。
いや···しぐさはかわいいが、頼むからこっちを見ないでくれ。
じーっ。
くそ···仕方がない。
俺はリーナに向かって顔を上げた。
白眼を剥いて。
「ひっ···!?」
「ん?」
「どうした、リーナ?」
「あ、あそこの人···顔が怖いです···。」
よし、成功だ。
他の王族達が違うところに視線をやった瞬間を狙ったので、大丈夫だ···たぶん。
国王を白眼で睨んだなどと言われると処刑ものだからな。
「ああ、ナミへーのことか。あまり失礼なことを言ってやるな。彼は私の命の恩人なのだから。」
「はい···そうですね···。」
とりあえず、セインの言葉でおさまったようだ。
「おい、そこの冒険者よ。」
ピリッとした悪意が伝わってきた。
「はい。私のことでしょうか?」
正面から恰幅の良い、いかにも軍人といった男が現れた。
2階の貴族たちからは、ここは「伏魔殿か?」とも思える割合で悪意を感じていたのだが、いずれも小物ばかり。だが、正面にいる男は、その極めつけとも言えた。
「貴様、陛下に向かって視線を向けるなど、立場を弁えていないようだな。」
王国軍の将軍ラドック·フェミリウム。
昨夜に感じた悪意の主だった。
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