第二章 亜人の国「冒険者ナミヘイ⑯」
リーリュアのおかげでクランハウスに入れてもらえることになり、エルミアと合流することができた。
それからすぐにエルミアの案内でクランマスターに紹介をされ、これまでの経緯を話すこととなった。
「ちょ···ちょっと待って。情報量が多すぎる。整理して良いか?」
クランマスターは、サブリナというエルフだった。
中性的でほっそりとした女性だったが、例に漏れずキレイな顔立ちをしている。
性格は外見に似合わず豪快なオッサンという感じで、ストレートな物言いをするので対話がしやすい。
「まず、あんたの名前だが、タイガ·シオタだな。」
「そうだ。」
「それで、冒険者としてはナミヘイ·タイガ·ヌケスギタというハゲにケンカを売るような名前で登録をしたと。」
「ハゲにケンカは売っていないが、その通りだ。」
「で、冒険者ギルドでリーリュア達が絡まれていたから、人族冒険者をフルボッコにして剃毛タイムに突入したと?」
「神のお告げで奴らの髪を刈れと言われた気がしたからな。」
「···その神っていうのは、どの神だ?」
「アトレイクというが、今は気にしなくて良い。どうせ堕神だ。」
「···わかった。ややこしいから無視しよう。それで、なぜ人族のおまえが魔王になった?」
「意図して魔王になった訳じゃない。エルフのスキルで2つ名を鑑定された。」
「···そうか。なんとなく理解した。エルフのスキルは強力だからな。それで、エルフの森には行ったのか?」
「ああ。精霊神アグラレスとララノアに会った。」
「···アグラレス様。」
「知っているのか?」
「知っている。私もはるか昔にエルフの森にいたからな。」
「そうか。だったら話は早い。ヘカトンケイルがいなくなった今、魔の森を通る必要はあるが、君らは故郷に戻ることも可能になった。」
「···確かに、それはうれしい知らせだ。だが、今すぐ戻る訳にはいかない。私達はこの国でやることがある。」
「そうか。」
「理由を聞かないのか?」
「この国に留まる理由をか?話したければ話せば良い。無理に聞き出そうとは思っていない。」
「別に隠すつもりはない。この国の人族の中には気心の知れた奴もいる。それに、王族の中には、私達を気にしてくれる人もいなくはないからな。」
「もしかして、リーナか?」
「ああ、一緒に行動したことがあるのだったな。リーナ様と、その兄もだ。」
「王太子セインか?」
「セイン王子のことも知っているのか?」
「少しな。」
「そうか。リーナ様が我々を案じているのは、単純にその優しさからだ。」
「まあ、何となくわかる。強烈な個性を持ってはいるが、心根は優しいと感じた。セインは違うのか?」
「王子も優しいが、王太子だからな。もっと先を見ている。」
「もしかして魔族絡みか?」
「よくわかるな?」
「状況を考えたら、それしか思い浮かばなかった。俺の持っている情報もそれほど多くはないからな。」
「だが、正解だ。」
「魔族に対抗するため、種族をこえて共闘したいということか?」
ようやく、リーナが危険を犯してまで、魔の森に立ち入ってきた理由に行き当たったようだった。
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