第二章 亜人の国「冒険者ナミヘイ⑭」
「では、殿下への報告は任せたぞ。」
「小隊長はどちらへ?」
「私は別の報告が課せられているからな。」
招聘状を受け取った後、俺はすぐに冒険者ギルドを出て、2人の騎士を追った。
騎士達を尾行したのには理由がある。俺が招聘状を読み、王太子殿下の名前を出した瞬間の騎士の表情だ。
一瞬だが、年嵩の騎士が俺を探るような目をした。相手の微かな表情や視線を読むことなど造作もない。
普通に考えれば、単に騎士団の紋による封蝋や、ファーストネームだけのサインしかない招聘状から、王太子殿下の名前が出るのはおかしいことだ。
年嵩の騎士は、「この冒険者は王太子殿下と既知の存在であるのではないか?」と考えたことだろう。
あとは不審な動きをしないか確認をすれば良かったのだが、軽率にもすぐに動きを見せてくれたようだ。
王都内の貴族街。
王城に程近いこのエリアは、権力の臭いがぷんぷんと漂う。
豪奢な建物だけでなく、通路に敷き詰められた石板までもが、その金満さを放出していた。
騎士を尾行しながら、街の護衛たちをやり過ごして進んでいると、周囲よりも明らかに広い敷地面積を持つ屋敷に行き当たった。
騎士が門番に声をかけて、中に入っていく。
夕闇が迫っているとは言え、さすがに不用意に忍び込むには、警護の数が多い。
俺は踵を返して、その場を去った。
場所さえ把握しておけば、誰の屋敷なのかは後でも調べることができるだろう。
そして想定通り、その屋敷からはどす黒い悪意が垣間見えていた。
再び冒険者ギルドに戻ることにした。
まだ冒険者としての登録が完了していなかったことに気づいたからだ。
「ナミヘーか···。」
受付に行くと、すぐにギルマスが呼び出された。
「そんな嫌そうな顔をしなくても。」
はあ、とギルマスはため息を吐いた。
「おまえが叩きのめした人族冒険者だけどな···。」
「何か?」
「ランクSも3人混じっていたんだが···。」
「だから?」
「···いや···聞いた俺がバカだったよ。」
再びため息を吐いたギルマスに、俺は素直に思ったことを告げた。
「ランクSであの程度とは、冒険者のランク制度が破綻しているとしか思えないな。」
「···その解釈がおかしい。」
「それで、何が言いたい?」
ギルマスは頭を抱えながら、カードのような物を取り出した。
「お前の冒険者カードだ。」
「黒いカード?これが一般的なものなのか?」
「本部に話をしたら、これを渡せと言われた。」
「ん?」
「この国初のランクカードだ。」
俺はカードに記載されたランクを見た。
「ランクがSSSになっているぞ。」
「おまえのような凄腕なら、強大な魔物でもソロで倒せるだろうってことだ。」
「ふ~ん。まあ、これで活動しやすいのであれば、ありがたくもらっておくよ。」
ギルマスには言えなかった。
ナミヘーが冒険者ギルド本部において、超危険人物指定されたことを···。
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