第二章 亜人の国「エージェントは冒険者を目指す⑯」
「···ぷ···ふ···マイク···。」
「いつまで笑っている?」
「だ、だって···ぶふっ!」
王都に向かう俺たちを、マイクが同じ馬車に乗せてくれた。
パーティー専用の精霊馬車だ。
御者台には、昨日はいなかった寡黙な男性チューリが乗っている。
因みに、町を出て一時間ほどになるが、マイクの頭が視界に入る度にケイトはあの状態だ。すでに腹筋を痛めているようだが、笑わずにはいられないらしい。
チューリに至っては、今朝マイクを見た瞬間に、「似合っているぞ。」と親指を立ててくれたそうだ。
「師匠も何か言ってくださいよ。ケイトがウザくて仕方がないです。」
マイクがウンザリした顔でヘルプを求めてきた···いや、俺にふるなよ。
とは言え、カツラを返す方向にはならないようにしておいた方が良さそうだ。
「シンキングタイムだ、マイク。誰もが目を奪われるような美人がいたとする。」
「はい!?いきなり何を···。」
「10人中、何人の男性がその女性に好意を持つと思う?」
「誰もがってことは、全員でしょう。」
「そうかな?」
「違いますか?」
「ケイトさんは、そういった類いの美人だと思う。」
「はい?」
「へっ?」
「む···。」
三者三様の反応だ。
「でも、俺はケイトさんよりも、エルミアが良い。」
「·························。」
「·························。」
「へ?へ?え!?」
「スキンヘッドも同じだ。わかる人にはわかるし、わからない人にはわからない。人間には好みや個性があるからな。」
「何となく、言っている意味はわかりますが···。」
「だから、気にせずに堂々としてれば良い。ケイトさんも、見慣れたらいちいち笑ったりはしないはずだ。」
「そ、そうですね。そうします。」
何となく理屈をこねておけば良いほど、マイクはチョロかった。
「エルミア。」
「なに?ケイトさん。」
「タイガって、いつもあんな感じなの?」
「あんな感じ···だと思います。」
「気をつけなさい。」
「え、何がですか?」
「あれは天性の人たらしよ。」
「································。」
露出の多い女よ、全部聞こえているぞ。
そんな会話をしながら、旅路は進んでいったのだが、道程の半ばくらいで思いもよらない事件に巻き込まれた。
「···魔族がいる。」
俺のソート·ジャッジメントが反応した。
邪気。
しかも、暗く陰湿だ。
「魔族!?」
「あなた、魔族が感知できるの?もしかして、聖属性魔法士?」
「いや、そういうスキル持ちだ。」
「師匠も冒険者ですよね?魔族と闘ったことがあるのですか?」
そう言えば、頭髪やカツラの件で話題が偏り、俺の素性を話す機会がなかった。
「俺は、スレイヤーだ。」
「スレイヤー?」
「マイク達と同じ、魔族を屠る者だ。」
俺はそう返答をすると、馬車から飛び降りて邪気の方に向かっていった。
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