第二章 亜人の国「エージェントは冒険者を目指す⑭」
じぃーっ。
風呂に浮かぶ落武者の首···もとい、勇者マイクを見る。
「························。」
目をそらしたマイクは、落ち着かない様子だ。
普段からカツラでハゲを隠している人間なら、当然の反応だろう。
素頭?の自分が直視されているというのは、居心地の悪さ満点に違いない。
だが、それでも見つめ続ける。
じぃーっ。
マイクの頬がひくついているように見える。
「ハゲだろうが、堂々としてれば良いのに。」というのは、ハゲていない奴の傲慢さだろう。
彼らにとっては、大きな大きなコンプレックスに違いない。
「な···何か?」
さすがに視線に耐えられなくなったのか、マイクが話しかけてきた。
「いや、髪は銀色なんだなと思ってな。」
「···お知り合いでしたか?」
少し苛立ちのある声音で返答をされた。「俺のハゲ頭を見るんじゃねぇ!」とでも思っているのかもしれない。
「さっき、会ったばかりだが。」
「え···?」
ん?
あ、そうか。
ここに来るまでは、カツラをかぶっていた。今は黒の短髪だ。雰囲気が変わりすぎてわからないか。
「エルミアのツレです。」
「···あ、あ~···タイガさんでしたね···。」
知り合ったばかりでハゲ頭がバレたというバツの悪さからか、マイクは視線をそらせた。
内心ではかなりテンパっているのだろう。俺の頭の変化にも気づかない様子だ。
あ、もしかして···。
ここで勇者とやらを味方につけておくのも悪くはないか。
いや、でも···。
う~ん、仕方がない。
また、アレでいくか···。
行動指針が決まった。
俺は湯船に浸かり、マイクの正面に座った。
「マイクさん。悪気があって言うわけじゃない。今から話すことを冷静に聞いて欲しい。」
「···な、何でしょう···?」
「実は···。」
俺がここに来るまでに、マイクの物らしきカツラを譲り受けた経緯を話した。
もちろん、誤解をされてマイクが敵意を持たないように、時系列でわかりやすく、真面目にだ。
「ほ、本当ですかっ!」
「ああ。風呂からあがったら、脱衣所まで持ってくるよ。」
「ありがとうございますっ!」
いやいや、感謝するのは良いけど、全裸で詰め寄ってくるなよ。
「あなたは神だっ!」
いや、違うし。
おい···両手で俺の手を包みこんで握るな。
「たいしたことじゃない。だから、離れて···。」
「いえっ!あなたは命の恩人にも等しいっ!!だからっ!!!」
だから、抱きつくなっちゅーねん!
ドカッ!
俺は全裸で抱きついてきたマイクの顎に掌底を突き上げた。
「ごっ!?」
何度でも言おう。
俺は全裸で詰め寄ってくる男は、全力で否定する。
例え、それが国王であろうが、勇者だろうと関係はない。
風呂からあがった俺は、カツラを取りに部屋に戻ることにした。
仰向けで浮かぶ勇者マイクを放置して。
余談だが、やはりマイクは勇者だった。彼の股間にある魔王は、魔王らしさのない皮かむりの様相を呈していた。
ハゲよりも、そちらを気にしろとは、口が裂けても言わないが。
それだと、夜の勇者にはなれないぞ。
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