第二章 亜人の国「エージェントは冒険者を目指す⑪」
「あれ?あんた···エルミアだよな?」
宿に着いた早々で、エルミアに声をかける男がいた。スラッとした長身で、イケメンだ。頭にはターバンのようなものを巻いている。
「え、誰?」
「え···あ、俺だよ。勇者のマイクだ。」
勇者?
え、何それ?
「···ああ、頭に何か巻いているから、わかりませんでした。」
エルミアがとまどった顔をしている。普段はそのターバン擬きはないということか。
「ああ···これは···その···ちょっと訳があって···あ、そういえば、そちらの人は?」
勇者のマイクとやらは、歯切れが悪く、急に話をすり替えやがった。何か後ろめたいことでもあるのだろうか。
「タイガです。その···私の旦那様です。」
嬉しいような、困るようなことをエルミアが口走った。ま···まあ、偽装夫婦は継続中なのだが、知り合いにまで嘘をついて良いのか?部屋だって別々にとってしまったぞ。
「···だ···旦那様···。」
マイクがポカーンとした顔をしている。
これはあれだな。
ちょっと気になっていた美女にツレがいたという、ショックな事実を受けた奴の顔だな。
「はい。」
ニコッと笑うエルミアが可愛すぎる。
「け、結婚していたんだ···。」
「ええ、そうですよ。」
「そうか···。」
どよーんと重たい空気が漂ってきた。ああ、うっとおしい。
「マイクはなぜここに?」
「ああ、それは···。」
「あれ?エルミアじゃない?」
マイクの後ろから、ぐらまぁなお姉さんがひょっこりと出てきた。ベリーダンサーのような衣装を纏っているが、腰にある武具が冒険者らしき素性を物語っている。
「ケイトさんも···。こんにちわ。」
「こんにちわ。久しぶりだね。」
「はい。お元気そうで何よりです。」
どうでも良いが、マイクさんとやらは気圧されたように脇にどけていた。何やら、「もう踏んだり蹴ったりだ。」などと、ぶつぶつ言っているが、興味がないので無視しておこう。
「それがさぁ、体は元気なんだけど、マイクのせいで依頼に出遅れちゃって。何の成果もなく王都に帰る途中なんだぁ。」
「そうなんですか?依頼に失敗って、珍しいですね?」
「そうでしょ?あのヘカトンケイルの討伐だったんだけどさぁ、現場に到着するのが遅かったから、誰かが討伐した後だったんだよ。」
ん?
ヘカトンケイル?
どういうことだろうか。
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