第二章 亜人の国「エージェントは冒険者を目指す④」
「大丈夫か?」
ガイは負傷した壮年のエルフに話しかけた。
リーナの従者に浄化と回復魔法を施してもらったため、状態はかなり落ち着いたようだ。今は、ガイを含めたエルフ達だけで固まって話をしている。
「ああ、助かった。俺はエルクだ。初めて見る顔だが、ルービー出身じゃないのか?」
「ガイだ。これまでは魔の森に住んでいた。」
驚いた表情をするエルクに、これまでの経緯を説明する。
「精霊神様が···。」
「ああ。互いに、過去よりも未来を見ようとのことだ。」
「そうか···まさか、こんな展開になるとはな。」
「あんたらがここに来たのは、エルフの里を訪れるという目的じゃなかったのか?」
「違う。俺たちはルービーの冒険者だ。王国から、魔の森に向かったリーナ王女を連れ戻す依頼を受けた。」
「···ヘカトンケイルがいるのにか?」
「徴兵のようなものだ。応じなければ、ルービーの自治権を剥奪すると脅してきたらしい。」
ガイは思わず舌打ちをした。やはり、人族は手放しに好きになれそうにない。
「しかし驚いたよ。リーナ王女や従者達が、俺たちに手をさしのべるなどとはな。」
エルクの言葉に、ガイは渓谷の向こう側の様子を見に行っているタイガに目を向けた。
「それに···リーナ王女の従者に、あんな化け物じみた奴がいるなら、俺たちが出張る必要もなかった気がするな。」
「···違うぞ。」
ガイの否定の言葉の意味が、エルクにはすぐにわからなかった。
「違うって、何が?」
「タイガはリーナ王女の従者じゃない。どちらかと言えば、こちら側の人間だ。」
「···どういう意味だ?あいつは人族だろ?」
「リーナ王女を含めた従者達全員は、タイガに教育的指導を受けた。」
「教育的指導?」
ガイは思わず笑みを漏らした。
「腹を殴られ、種族間での差別がどれだけ愚かな行いかを説かれていた。」
「···王女の腹を殴ったのか!?」
「ああ。今から思えば、傑作だった。」
「···何者なんだ?あのタイガという男は。」
「今世の魔王だそうだ。」
「「「「「魔王!?」」」」」
ガイ以外のエルフ達全員が驚きを声にした。
「そ···それは、自称魔王というイカれた奴ということか?」
ルービーの街にも時折現れるイカれた奴がいる。エルクはそれと同じかと考えた。
「いや、精霊神様が認められた本物だ。魔王で、かつ亜神だと言うことだ。」
魔王とは、亜人と呼ばれる者達にとって、英雄と同意義である。だが、亜神は人間が神格化した存在。エルフにとっては敬うべき存在ではないが、広義では精霊神と並び立つ存在であった。
「あれが···そうか、どうりで強いわけだ。」
数百年という長きを生きてきたエルクは、様々な体験をもって、魔王や亜神の存在が事実に基づくものであることを知っていた。
その分、若きエルフよりも、受け入れる下地を持っていたと言える。
「ならば俺は···あの人の下に付かなければな。」
こうして、タイガ自身が知らない所で、魔王勢力は徐々にではあるが拡大していくのだった。
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