67話 学校に行こう④
図書館は知識の宝庫だ。
この世界について俺が知らないことを補填する資料が数多く揃っていた。
まず、世界地図を閲覧する。
この地域と魔族の生息地を確認してみる。
元の世界とは位置関係や地形が当然異なる。現在地は例えるなら欧州の真ん中あたりと言えるだろうか。
全体図で言えば、ユーラシア大陸をもっと東西に広げ、アメリカ大陸がなくなったような感じの地図。
極東と言われる部分は島国だが、日本よりも遥かに大きい国土を持っていた。
次に、世界と今いる国の歴史書関連に眼を通す。
戦争と技術革新が交互に繰り返されるのはどこの世界でも同じなのだなと辟易しながら、科学と魔法文化の違いに注目した。
魔法は生活にも密接している。
魔石を動力源に用いた照明や家事道具が普及し、銀行のATMの代わりを果たすシステムなど、その技術力は決して低くはない。
逆に兵器などは存在せず、魔法士が大きな火力として戦争の道具となっていた。
争い事があっても大量殺戮兵器という概念がないため、剣や魔法に頼る攻防が一般的なのである。
そういったバックボーンにより、諜報活動はエージェントの職務とは異なり、もっぱら政争のためのスパイ活動と暗殺が主なものと言えた。
次に魔法の基本書を開く。
そこでひとつの論理的解釈にたどり着いた。
無力な人類は魔族や魔物という強力な敵に対抗する手段として魔法を編み出したという記述があったのだ。
魔法は魔族が編み出したものではないのか?
最後の項まで眼を通しても、その疑問を解消することはできなかった。
だが、仮説を立てることは可能だ。
この世界の人間は身体能力がそれほど高くない。そのために力のある魔族や魔物と対等に戦える武器として魔法が編み出され発展した。
元の世界に置き換えて考えてみる。
魔族も魔物もいない。
よって対抗手段となる魔法も当然存在しない。生活の利便性と対人兵器の機能追及で科学が究められ発展した。
どちらも必要に迫られて環境に適応し、それぞれの道を歩いたということだ。
それを基準に考えると、俺の身体能力が魔族並みなのは重力のせいではなく、もともとの体力が魔族と拮抗しているというだけなのかもしれない。
いや···仮説は所詮仮説。
考えても立証はできない。
今はこの辺にしておこう。
期限が定められたミッションと言う訳ではない。できることだけをやり、ゆっくりとでも情報が集まればそれでいい。
何せ異世界の文字をすらすら読めるこの状況すら、なぜなのか理解ができていないのだから。




