第二章 亜人の国「エージェント vs 巨人⑦」
一通り毒を吸い出したことにより、変色をしていた腕は、少し赤黒く腫れたようになった。
ナイフで切った傷には、ドワーフからもらった小瓶から火酒をかけて消毒する。
「化膿止めの薬だ。」
ガイが手渡してきたのは、魔の森で薬草を採取して加工した薬だ。エルフは森人とも言われ、薬草類にも詳しい。
「やはり発熱しているな。ガイ、リーナ達と合流して、ゆるふ···ケティが解毒できるようなら頼んでくれないか?」
吸い出したとはいえ、完全に毒が抜けたわけではない。
「ああ···わかった。」
ガイが良いのか?という表情をした。
「···リーナ様が一緒なのか?」
女性エルフが聞いてくる。彼女の肌は浅黒い。
普通に考えれば、見知らぬダークエルフを、王女であるリーナに会わせることは危険な行為だ。
人族とダークエルフの歴史を知っているなら、誰もがそう思う。
蔑ろにされ、長い年月を生きてきたダークエルフにとって、人族の長である王族は旧敵と見なしている可能性が低くない。しかも、わざわざヘカトンケイルと闘うという危険を犯してまで、ここにいるのだ。
「リーナ様は近くで待機している。そちらの目的が何かはわからないが、今は時間がなさそうだ。負傷者の処置を優先してくれ。ガイ、俺のスキルでは大丈夫だ。」
エルフ達に言外に不用意な動きはするなと釘を刺し、ガイにはソート·ジャッジメントでは彼女達に悪意がないことが確認できたと告げる。
「タイガは···。」
チャカ、キ、シュコ、カチーン!
ポンッ!
ヒュ~···ボォォォーッ!
ガイが話しかけてくるが、それを無視した俺はGLー01の弾薬を焼夷効果のあるものに装填しなおして、ヘカトンケイルの胸部に向けて撃った。
「···グォォォォーッ!」
オッサンの治療中に、微かな振動をとらえていた。
頭部を貫通させたため、まさかとは思っていたが、焼夷弾を受けて燃えるヘカトンケイルは、熱さに気づいて動きを再開した。
普通であれば考えられないが、頭部の数だけ脳も複数あるのかもしれない。前後の脳を破壊した衝撃で左右の脳が麻痺していただけということか。
「俺はコイツを抑える。すぐに動け。」
そう言い放った俺は、さらに焼夷弾を撃ち込み、炎を纏いながらも起き上がろうとするヘカトンケイルとの間合いを詰めた。
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