第二章 亜人の国「エージェント vs 巨人②」
「ヘカトンケイルと近接戦をやるのは自殺行為だ。」
ブリーフィングを開始した。机に羊皮紙を出し、ガイやリーナの従者達に協力をしてもらい、渓谷の地図を書いていく。
「そりゃあ、そうだろ。あんなのと打ち合える人間なんていない。」
「そうだ。でも、だからと言って、魔法で攻撃をするにしても、奴の攻撃範囲は広い。となると、極大魔法を撃ち込むくらいしか方法はないかと思う。」
普通の魔法の射程範囲は数十メートル程度だ。しかし、射程に入る前に岩でも投げられたら、それで詰む。
「極大魔法なんか扱えないですよ···。」
この中の唯一の魔法士である煉獄ちゃん···本名キャロちゃんがつぶやく。
「渓谷で極大魔法なんかを放てば、地形が変化する。あそこは魔の森から魔物が出ないための壁のようなものだ。もし使える者がいたとしてもオススメはできないな。」
ガイの言葉だ。
なるほどと思った。
ガイにしてみても、魔の森から魔物が減ることはともかく、その結果として、人族の街に犠牲が出たり、逆に悪意を持つ人族が、自分たちの居住地域に立ち入ってくることを好ましく思われずにはいられないのだろう。
「となると、手段は限られるな。」
そこで、俺はダニエルを見た。
「···やはり、俺に生け贄になれと?」
ダニエルは、まるで悟りを開いた修行僧のような表情をしていた。
「いや、あれは冗談だ。」
「···あの質の悪い冗談のために、あんな長い尺を使ったのかよ···。」
ん?
なんだ、その発言は?
尺?
おまえは芸人か?
まあ、良い。
「そういうわけじゃない。だが、それに近いものを頼みたい。」
「近いもの?」
「囮だ。」
「いちおう、聞かせてくれ。なぜ俺なんだ?」
「囮にはヘカトンケイルの攻撃範囲ギリギリで奴の意識を引き付けてほしい。攻撃を回避するために、それなりに動きが素早く、目立つガタイを持つ者の方が良いからだ。」
ガイやシュラも身体能力は高いだろうが、2人とも細身だ。ダニエルは騎士らしい体格をしている。
「···なんだ、ちゃんと意味があったんだな。」
「あたりまえだ。俺はピンポイントで遠隔攻撃をする術を持っている。ただ、渓谷は風の動きが不安定だからな。射程範囲は、最大で500メートルといったところだろう。」
ダニエルがヘカトンケイルを引き付けている間に、正面から頭部にAMRー01で狙撃をする。
それが一番確実な方法だと考えていた。
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