第二章 亜人の国「 ダークエルフ⑬」
リーナ達は空家を二棟借りて、男女に別れて寝泊りをしているらしい。
俺はガイから建物の場所を聞き、深夜帯に訪れた。
正攻法ではまた邪魔が入るかもしれない。そう考え、裏手から侵入を試みたが、そこには俺をいきなり殺そうとしたアイツがいた。
「やあ。」
気配を消して近づいていたが、建物はそれほど大きいものではない。このまま侵入をしたところで、従者達に気づかれずにという訳にはいかないだろう。俺は、正面から対話をしてみることにした。
「き···貴様っ!」
「武器は持っていない。リーナ様と話をさせてくれないか?」
あからさまな殺気と、敵意丸出しの視線。やはり、未熟者だ。
「勘違いはしないで欲しい。俺は敵対するつもりはない。」
「·······························。」
ギリギリと歯軋りが聞こえてきそうなほど、奥歯を噛み締めている。
「冷静に考えて欲しい。そのつもりなら、君らを殲滅することもできた。」
装備している剣の柄に手が近づいていくのが見えた。
「リーナ様に俺を斬れと言われたのか?」
エージェントは、動と静のスキルを身につけている。
動とは武であり、射撃や護身、武具を使った近接から遠距離までを網羅する戦闘力を指す。
対して、静とは知識や思考、話術などを駆使することによって相手の懐に入り込み、欺いたり、破滅や協力をさせることを言う。
優れたエージェントほど、後者の静のスキルが高い。
武力だけで解決を計ろうとするのは、傭兵か破壊工作員で事足りるからだ。
因みに、タイガのスキルレベルは、最高ランクの籠絡者だ。籠絡者は、巧みな話術で相手を意のままに操る術を持つ。
ランクには他に2つが存在し、性技で異性同性を問わずに相手を取り込む夜這屋と、薬物や道具を使用して半強制的に操る調教師がいる。
タイガは夜這屋にも適性があったが、「何が悲しくてオッサンとベッドインをしなければならないのか?」と考え、教官を理詰めで籠絡したことがある。異性相手の技は極め尽くしたが、いくら任務でも男色は嫌だからだ。
そう言えば1人の教官がしつこく俺をつけ回し、その有益さを実技で教えようと強行策に出られたことがあった。その教官の姿は、それ以後確認されたことがないのだが、何があったのだろうな。
ああ、つけ足しておくと、俺の貞操は未だに無事だ。今も、そしてこれからも、そういったバカな輩は、たぶん姿を消すことだろう。
なぜかは知らないがな。
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