第二章 亜人の国「 ダークエルフ⑤」
広場を眺めていると、2人の女性が近づいてきた。
共に冒険者風の格好をした人族だが、前を歩く方は高貴な雰囲気をまとっている。後ろに控えているのは···経験上、曲者だと感じた。
あまりお近づきになりたくない2人だなと思っていると、残念ながら俺の正面で足を止めてしまった。
「タイガ·ショタさんですね?」
久々にかまされた気分だ。シオタをショタと呼ばれたのはいつ以来か。
「タイガ·シオタです。シ·オ·タ。ショタと言うのは、私の出身国では少年や小さな男の子に執着や愛情を持つ変態のことを指します。つまり、あなたは初対面でいきなり私のことを変態呼ばわりされた訳です。不愉快極まりないので、これで失礼致します。」
「えっ!?」
唖然とした表情をした相手を置き去りにして、俺は踵を返し、その場を去ろうとした。
ザッ!
目の前に、後ろに控えていたもう1人が立ちはだかり、行き先を封じられてしまった。
相当な身のこなし方をする。
「血のにおいがするぞ。どこぞの国の暗部か?」
冷徹な表情をしていた仮面に亀裂が入る。立ちはだかった女性の眉がピクリと一瞬動いたのだ。
「リーナ様を侮辱して、無事に済むと思うな。」
どうやら、高貴な雰囲気をまとった方はリーナと言うらしい。
「侮辱されたのは俺の方だ。知らない国の文化を理解していないのは当然かと思ったから、この程度で済ましている。」
「下賎な者が身をわきまえるが良い!」
正面の女性が瞬時に短剣を抜き出し、俺の喉に向けて躊躇いもなく一閃させた。
俺は相手が短剣を持つ右手首を左手でとらえ、軌道を逸らす。
すぐにその右手首を掴んだまま前後左右に動かして相手の重心を崩し、手前に引き込むと同時に間合いを詰めた。
右足を斜め前に軽く振り上げて、返す動きで相手の右足の外側を刈り取る。
柔道でいう大外刈りだ。
相手の女性は後頭部を地面に強打しそうになるが、掴んだままの右手首をコントロールして、そのまま抑え込んだ。
「忠義を尽くすのは良いが、短慮は身の危険を高める。結果、リーナ様を窮地に追いやることになるぞ。」
相手は何が起きたか理解できず、驚愕に目を見開いていた。
身のこなしを見る限り、かなりの手練れではあるが、例に漏れず、この世界の体術はレベルが低い。
「くっ···。」
悔しさや怒り、憎悪のこもった目を向けられるが、こういった手合いは中途半端に終わらすと後々面倒なことになりかねない。
俺は頸動脈を圧迫して落とした。
「シュラっ!?」
身動きをしなくなった女性にリーナが叫んだ。
シュラという名前らしい。
いきなり襲ってきたし、修羅の間違いじゃないのか?などと一瞬思ったが、どうでも良い。
それよりも、これはガイに仕組まれたのかもしれないな。
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