第二章 亜人の国「 魔の森⑤」
3つ目となるベースを設置した。
既にスタート地点から、直線で50キロメートルは離れているだろう。
倒した魔物の数は100を優に越えていた。いちいち数えるのが面倒なので、詳しい数はわからない。死肉を貪る魔物や獣、病原菌の発生を防ぐために、死体は何度かに分けてスタンスティックで消し炭にしている。
スタンスティックは、魔石を動力としていた。それほど長時間の使用はしていないが、中の魔石は一度力を枯渇させ、新たな魔石に取り替えてある。束頭を取り外して魔石を入れ替える構造なので、懐中電灯の電池交換の要領でお手軽だ。予備の魔石は全部で5つ所持しており、現状は残4つになっていた。
今のベースに行き当たるまでに、人の足跡を見つけている。足跡、通りすぎた際に生じた草木の折れ、刃物による戦闘の痕など、おそらく複数の人間が近くで行動をしていたはずだ。
こちらから彼らの拠点を探すのも良いが、どの程度の人数がいるのかは不明なため、このベースに誘致してみるべきかと考えている。最悪の場合は、ネルシャン達とのやり取りと同じような状況を作る可能性があるが、いずれにしろ、接触をする必要があった。
狩猟で得た肉を木箱の中に並べて燻した。
木箱は手製だ。これに平らな石などを入れて簡易な薫製器を自作したのだ。
スモークするために、オーク材を森で確保し、火をつける。
薫製中の煙が、食物に殺菌作用と脱水効果を生み、保存食を作り出す。下処理のために塩を使ったが、塩漬けにするほどの量は持ち合わせていなかったため、温薫といわる燻し方で丸1日の時間をかけた。
この間に、近隣で活動する人間が、俺を見つけてくれる可能性は高い。
俺は存在を発見される前に、近くの水辺で体を洗った。全裸でいる時に囲まれて、また裸の妖精を演じるのは嫌だからだ。裸を見られることには耐えられる。だが、初見の印象が悪すぎる。また変態とか言われるのは避けたかった。
嫌だよな?
俺は嫌だ。
後で誤解を解くのが面倒だろう?
え?
期待を裏切るな?
ふん···挑発しても乗らないぞ。




