第二章 亜人の国「 魔の森④」
対人用のスタンスティックを試してみた。
相手は狼型の魔物。
人間よりも一回りくらい大きなそれが、複数体で連携をとって襲ってきた。
攻撃を避けながら、スタンスティックを相手に打ち込む。
数十秒程度で殲滅。
心臓に近い部分に当てた奴等は即死。足や、体の後方部に当てた奴等は昏睡に近い状態となった。
打撃を加える部位については考える必要があるが、過剰な威力とも言えない。対人相手にでも実用が可能と判断できた。
こういったことにあまり時間を割きすぎる訳にもいかないので、先に進んでいく。
シュッ!
ヒュンッ!
ベースから10キロメートルほど離れた辺りで、虫型の魔物に襲撃を受けた。
スズメバチが全長30センチまで巨大化したような奴だ。
ブ~ンという羽音を鳴らしながら、10体以上が迫ってきたので、腰に付けたナイフを2本抜き迎撃した。
いずれも、首と胴が離れて絶命する。
複数の相手に囲まれた時や、屋内や洞窟内で使用するために製作してもらったナックルナイフを使用した。
こちらは、簡単に言えば殴打用のメリケン·サックにナイフがついた構造をしている。
近接戦闘用に特化しているが、実はかなり使い勝手の良い刃物である。
基本的には切る、突く、刃を弾くという単純武器だが、これにナックルガードがついているだけで、攻防の幅が広がるのだ。
例えば、ナックルガード部分で殴ったり、2本持ちだと盾代わりにすることもできる。
ピルケに製作をしてもらったのは、ナックルガード部分が拳の形のようにギザギザになっており、そこで殴った場合の破壊力を高めたり、相手の剣を受ける時にギザギザの凹部で刃を固定し、もう片方の束頭を打ち込んで刀身を叩き折ることも可能だ。
エージェントは基本的に、ナイフか拳銃を携行し、それで闘うことが多い。
こちらの世界では、さらに殺傷力や戦闘時の動きの幅を広げる必要があったため、この形状がベストだった。
神威術で蒼龍や破龍を空間収納できる俺にはあまり関係ないが、長期の行軍や探索をする時には、長尺の得物は重量や携行の点で負担も大きいので、それを解消するメリットもある。
深い森の中で移動を続けなければならない今回のようなケースでは、このナックルナイフとスタンスティックだけを装備しているので、身動きが取りやすいのが実感できている。
新しい装備の有用性を検証しながら、俺は急ピッチに魔の森の探索を進めていた。




