第二章 亜人の国「 エルフの森⑦」
模擬戦とは、擬似的な戦闘行為を意味する。
だが、ララノアは真剣を握っている。刀に少し似た、細身で白銀の片刃剣。
加えていうなら、剣豪がまとうような覇気まで漂わせていた。
幼少期の、模擬戦とは名ばかりの死合を思い出した。あれは生き残るための関門。剣の腕だけではなく、相手を死に追いやる胆力が試された。
だが、今は違う。
ララノアからは殺気ではなく、気魄を感じる。
気魄とは、力強く立ち向かっていく精神力。ただ勝利だけを見据えていることを強く感じさせられた。
構えは正眼。
正眼の構えは、攻防においてバランスが良く、1対1の真剣勝負においては最も隙が少ない。
俺は片手を上げて、少し待ってもらうように伝えた。
『なめとんかぁ!ああっ!!』
『いてまうぞ!ゴラぁ!!』
破龍を空間収納に入れ、蒼龍を手に取る。
さすがに、この場面で反社会的なキーワードを口にはできない。念じるように脳内でつぶやいてスキルを起動させたが、もう少しまともなキーワードに早く変更をしたいものだ。どこかにマニュアルかFAQでも落ちていないものだろうか···。
「神威術ね。本気になってくれたようで何よりだ。」
武具を持ちかえる様子を見ていたララノアは落ち着いている。実戦経験が豊富なのだろう。多少のことでは、動じないようだ。
「待たせたな。」
その言葉に、ララノアの覇気がさらに強くなった。
俺は蒼龍を下段に構えた。
これは動きの妨げになるという欠点はあるが、足への攻撃や斬り上げなど、相手が防御をしにくいカウンターに特化した構えといえた。
ララノアの体格や、体の運びを見る限り、俊敏さでは向こうに分があるだろう。エルフ得意の風属性魔法による遠中距離を一気に詰める動きにも注意を払わなければならない。
その対抗のための構えだった。
「行くわ。」
ララノアはその言葉を放つと同時に、風をまとって一直線に向かってきた。




