第二章 亜人の国「 エルフの森⑥」
俺は試されたのだと、説明を受けた。
魔王が現れたとしても、エルフは力だけで付き従うことはない。他種族との交流が希薄なのは、プライドの高さ故なのだ。そんな彼らが認めるのは、合理的な判断で自分達の味方と認めるに足る資質。そして、それは精霊神であるアグラレスと、エルフの森で最強の戦士であるララノアに託されたとのことだった。
「私は、ミーキュアとミンのスキルを信じています。彼女たちが認めることのできる人物であるのならば、実際に会って本質を見極めるつもりでした。」
アグラレスが事の経緯を説明してくれたが、ミーキュアとミンに認められることが第一関門だったようだ。
「森での出来事が、あなたが俺を見極めるための試練だったと?」
後で聞いた話だが、ミンが自らのスキルが原因で孤立をしているのは事実だが、アグラレスとは懇意の仲だそうだ。ただ、あまりつきあいが深いと目されると、連合内でいろいろと問題があるらしく、対外的には立場上のつきあいのみだと装おっているらしい。人の感情を読み取ることのできるミンを取り込んで、何らかの謀を企てているのではないかとの嫌疑でもかけられるのかもしれない。
「そう。あなたは、見ず知らずの子どもを命がけで守ろうとした。それは、純粋な優しさ、そして誠実な心を持つことの証明になるわ。」
「それだけで、他の者は納得するのですか?」
「普通ならしないわね。でも、それがララノアだと、話は大きく変わる。」
そのララノアは、なぜかずっと俺の手を握っているのだが···なぜ?
「彼女だと、何が違うのですか?」
「まず、彼女は魔王候補者の1人であるということ。あなたを認めるということは、自らその補佐に回るのを認めたことになるわ。それに、彼女は先代精霊神の末裔。他者の従者になるということは、種族としても、系統としても非常に重きことなのよ。」
俺はララノアを見た。なぜか恥じらうような表情をしている。
「ララノアさんは、それで良いのか?」
「ララノアで良いわ。私に異存はない。ただ、もう一つだけ、あなたを試してみたいことがある。」
初めて聞くララノアの声は、低めだが澄んだ声だった。そして、急に真顔になったララノアを見て、『たぶん、アレだろうな···。』と思った。こちらの世界に来て、何度となく経験したアレだ。
「あなたの強さを見せて欲しい。私と模擬戦をしないか?」
ほら···ね。




