第二章 亜人の国「 ドワーフの里⑦」
神威術の効力は、すごいの一言だ。
魂の盟約がなければ、出会ったばかりのカリスやピルケを信用することなどできなかった気がする。
いや、あるいは異世界に来てから、俺の警戒心が下がってしまったのかも知れない。
仮定の話をしても仕方がないのだが、元の世界で魂の盟約が使えたとしても、安易には他人を信用しなかっただろう。
魂の盟約は、強制的な制限に他ならない。
人の意思をねじ曲げてしまう力。そんなものは、どこかで歪みが生まれる。エージェントとしての立場なら、一時的な契約と、その履行のためだけに使用した可能性が高い。
だが···今の俺は達観が過ぎる。
表面上はともかく、冷徹でいなければ、何か取り返しのつかないものを失うかもしれない。
ピルケに協力をすると言い出したカリスと、ティーファやアレックスがドワーフの里に残ることになった。
エルフの森に入るためには資格が必要で、ティーファやアレックスは条件を満たさないそうだ。
2人は残念そうではあったが、エルフの森には入れないと最初から思っていたらしく、この里にいる獣人達に会いに行くと話していた。
「ねえ。」
イリヤが俺の袖を引っ張った。
「どうかしたのか?」
「カリスは残しておいて大丈夫なの?」
「大丈夫だろ。あいつはあれで勉強とか実験が好きそうだからな。集中できることがあれば、問題は起こさないだろ···たぶん。」
「たぶんって···ここで極大魔法とかを使ったらどうするのよ。」
「それはドワーフ達に運がなかったってことだな。」
「あなたって···。」
「ん?」
「優しいのか、怖いのかわからない人ね。」
「そうか?イリヤに危険が迫ったら、命がけで守るぞ。」
「······························。」
イリヤは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「出た···天然。」
「あれで放置するから質が悪いのよね···。」
傍にいたミンとミーキュア、そしてリーラまでが深いため息をついた。




