第二章 亜人の国「 ドワーフの里②」
ドワーフの里には、大規模な宿泊施設があった。
宿屋ではない。
鍛治士を目指す者達が、多方面から修行や研修などで訪れることが多いので、その滞在のために建てたものらしい。
里を治める機構も同じ建物内に存在するため、ミン達と一緒にまずは里長のもとを訪れた。
「ひさしぶりだな。ミンもミーキュアも元気そうで何よりだ。」
豪快に笑いながら話すのは、背丈は160センチ程度と低いが、はち切れんばかりの肩や腕の筋肉を誇示するかのような、ヒゲもじゃの壮年男性だった。
「ピルケ様もお元気そうで何よりです。」
ミンがこれまでの経緯を説明する。ピルケは表情を変えずに最後まで話を聞いていた。
「なるほどな。そこにいるのが魔王か···ミンにリーラにイリヤが同行しているということは、それを認めたってことだな。」
「そう。タイガは強いし、聡明。」
「そうか。だったら、俺たちと勝負をしようじゃないか。」
ピルケはいたずらっ子のような顔で、タイガを見た。
「勝負?」
「そうだ。俺たちドワーフは、酒と腕っぷしの強さで、相手がどんな奴なのかを知る。お前さんが本物の魔王なら、それを知らしめてみせろ。」
なんだ?
また模擬戦でもするのか?
そんなことを思っていると、ピルケは他の者に何かの指示を始めた。
言葉の端々に、「火酒」とか、「この前のチャンピオンは誰だ?」とか、嫌な予感しかしない言葉が聞こえてくる。
知り合いのドワーフは、都で商売をしているせいか社交的だったが、ここのドワーフは血気盛んという言葉がしっくりとくる印象だ。
その姿は、本来のドワーフそのものと言って良いのかもしれない。酒やケンカが好きで、気難しい職人気質。馴れ合いが嫌いなため、相手の見極めを酒の飲み比べや、力比べで行うのが慣習なのかもしれない。
そんなことを考えながら、カリスやイリヤの方を見ると、壁際の棚に飾ってあった細工品を、真剣な面持ちで見ていた。
棚には銀でできたネックレスなどが数点飾られていた。離れたところから見ても、かなり精巧な細工が施されているのがわかる。
さすがドワーフ。
ゴツい体だが、手先の器用さは尋常ではない。
瞳をキラキラさせながら、細工品を見ているみんなを視界にとらえながら、俺はあることに思い至った。
まあ、ただでドワーフの酔狂につきあう必要はないよな。
「タイガ···あなた、また悪い顔をしているわよ。」
横からミーキュアにツッコマれたので、すぐに真顔に戻した。
しかし、「また」って何だよ。「また」って···。




