第二章 亜人の国「 エージェント vs 魔神②」
召還された魔神は、イリヤから俺に視線を移して、凝視していた。
感情は読めないが、舐めるような目で見てくるので居心地が悪い。
先ほどテトリアとつぶやいた気もするが、どんな関係性なのかを聞くのが怖いので、しばらく待つことにした。
「んん?容姿は全然違う···でもなぁ···オーラの波動が酷似···いや···あれからだいぶ経つし···あ、そうか、転生という可能性も···。」
何やら、1人でぶつぶつ言っている。
相手が人間なら、今のうちにぶちのめすのだが、目の前の男は魔神だ。不用意な攻撃は避けた方が無難だろう。
「魔力は···あれ?魔力が読めない···ん?んんー、なんだ、どうなっているんだ?」
まだぶつぶつと言っている。
「イリヤ、相手は取り込み中のようだ。時間がかかりそうだから、今からここを離れろ。」
俺は、敢えて魔神にも聞こえるように、イリヤに逃げるように促す。
「え!?でも···。」
魔神には俺の声が届いているはずだ。今のやりとりの際に、一瞬だけ俺とイリヤを交互に見た。
それでも、何かのアクションを起こす気配はない。
魔族や魔人と接することが多いと、傾向が見えてきたりもする。基本的に、魔神も同様なのではないかと思う。
こいつらは、絶対的な強さを持ち、当然プライドも高い。だが、長命種で、かつ強大な力を持っていると、逆に暇を持て余したりもする。好奇心や探求心が旺盛なのに、興味をもてるものが少ないのが要因だ。
俺の予想では、魔神の興味は今は俺にある。イリヤのことは、既にどうでも良いとさえ思える。
それに、質問もせずに自身の理論展開を始めているところを見ると、解析や分析が好きなのだろう。
地雷(プライドを傷つける)さえ踏まなければ、こちらの勝手も気にならない、鷹揚な思考を持っている気がするのだ。
「彼の興味は俺にあるようだ。俺は残るから、迅速な行動をしてくれないか?」
イリヤは何となく、理解をしたようだ。すぐに召還で四つ足の鷲···グリフォンを呼び出し、それに乗って飛び去った。
「うーん···テトリアであって、そうでないような···堕神の気配も感じられないし···。」
魔神はまだ思考を展開していた。




