第二章 亜人の国「 エージェント vs 魔神①」
イリヤに魔神の詳細を聞いたが、情報は少なかった。
俺と背丈があまり変わらない人型で、膨大な魔力を有しているということ。そして、魔神自らが数千年前から存在し、複数の国を滅ぼした経験があると語ったことくらいだ。
闘う前に、余計な予備知識は持たない方が良いと考えることにした。
相手は魔神。
人外だ。
だが、2つ名の通りで考えれば、俺は亜神。
同じ神という文字が入っている。
擬物臭しかしないが、対等な立場として相対すべきだろう。
「い···いくわよ···。」
「ああ、頼む。」
ミン達が10キロ以上離れた位置に退避した後、イリヤが召還術を施す。
リーラなどは、「一緒に闘う」と言い出したが、他の者が側にいると、闘いに集中ができないと言って突っぱねた。
魔神がどの程度の力を持っているのかは、対峙してみないとわからない。
もしかすると、瞬殺されてしまう恐れもあった。
しかし、自分から「俺を信じろ。」とイリヤに言ったのだ。逃げ出す気など毛頭ない。
まして、魔神が最悪の存在だとしたら、イリヤの犠牲だけで終わるわけがないのだ。
過去のように、複数の国が滅びる事態に発展する前に、尽力する。
それが、自分のやるべきことなのだと、はっきりと自覚しているのだから。
「来るわ···。」
地面に描かれた魔方陣が、白くまばゆい光を放つ。
その中央から、人の頭があがってくる。目、鼻、口、上半身と、徐々に姿を現す魔神。
光景だけを見ると、床から幽霊が出てきたような恐怖映画チックだ。
実際に、フィクションなら良いなと現実逃避をしてみたが、やがて、それは完全に顕現してしまう。
魔方陣が消え、そこに佇んでいたのは、髪も肌も真っ白で、瞳だけがローズクォーツのイケメンさんだった。
「ああ···ついにやってしまったね。僕を呼び出すと、世界が滅びるかもしれないと···ん···あれ?···テトリ···ア···?」
ん?




