第二章 亜人の国 「暴虐竜 vs エージェント⑧」
痛打をあびた暴虐竜だが、そこで攻撃を止めることなく、鋭い爪で斬り裂きにきた。
俺はその攻撃をかいくぐり、体を錐揉み状に回転させながら、真上に跳び上がる。
剣の柄頭で暴虐竜の脇を突き上げる。
「グッ!?」
脇は人体の急所だ。
神経が集中しているため、ここへのダメージは他の部位の比ではない痛みをともなう。
その部分に鱗がないことは、すでに確認をしていた。
激痛で上体を下げた暴虐竜の眉間に、柄頭を打ち込んで脳を揺らす。
一瞬、動きを止めた相手の膝裏に、破龍の峰を叩き込む。
暴虐竜は一連のコンボで、仰向けに倒れこんだ。
俺はすぐに走り出す。
視界に入った長は、背中を見せて逃亡を始めようとしていた。
「クリティカル·バインド!」
ミンが長を拘束する。
俺は動けなくなった長が持つビリ◯ン像に、破龍を一閃させた。
ザシュッ!
ビリ◯ン像は、軽く火花を散らしながら、2つに割れる。
光を浴びて、黄金の煌めきを放つ像の中からは、別の異質物が紫の輝きを反射させた。
破龍を何度となく返し、さらに細かく斬り砕いていく。
空中で小石程度の大きさに分断された像は、禍々しい何かを霧散させながら、そのすべてを地面に散乱させる。
「な···なんということを···。」
俺は長に当て身を入れて、意識を奪った。
しばらく、像の破片に目をやるが、何も起こらない。
どうやら、あの禍々しい力は消え去ったようだ。
「タイガ···。」
ミンの声に振り向くと、暴虐竜が痙攣を起こしていた。
「······················。」
しばらく様子を見ていたが、真体化が解けたのか、暴虐竜の姿が人の姿に戻っていく。
「···ん?」
完全に真体化が解けた後、そこに倒れていたのは、全裸の少女だった。




