第二章 亜人の国 「魔王と亜神とエージェント⑪」
~Side ブレド~
ギャラリーが巻き添えにならないと見なした距離で、ブレスを放った。
直撃すれば、奴は終わる。
いや···何かが、おかしい。
「!」
斜め後方から、微かな気配が読み取れた。
先ほど、ネルシャンに使った瞬間移動か?
だが、一度見せた技が、何度も通用するとは思うなよ。
竜人には、第六感とも言うべき察知能力があるのだ。
すぐに体ごと反転し、ブレスを気配に向けて放射する。
捉えた。
ぬっ···ブレスを直撃した相手の頭がピカッと光ったぞ!?
まさか···。
その瞬間、腹部に何かが触れ、すぐに背中全体が突き抜けるような衝撃が襲った。
何だ···一体、何が起こったの···だ···。
混乱の中、次には首が圧迫され、そのまま意識を落とした。
~Side タイガ~
ブレドに向けて中指を立てると、奴は激怒したようだ。
ゆっくりと近づく俺にブレスを放ってきた。
だが、中指に注力した奴は、俺が気配を置いて、すでにその場にいないことに気づかなかった。
一瞬の隙。
その間に、ブレドの斜め後方で倒れていたクソソンの体を奴に向けて蹴り上げる。
微かな気配を一緒に乗せて。
ブレドは、想定通りにそれを察知した。
体を反転させて、ブレスを放つ。
『さらば、クソソン。』
俺は、身代わりのクソソンが、ブレスの直撃を受けたと同時に、ブレドの正面に立った。
右足で後方の地面を踏み抜き、膝と腰の回転をその力に乗せる。
軸足となる左足のクッションで、さらにその力を増幅させて、脇に引いた右腕に集束。そのまま、気と共に掌底にこめて、ブレドの腹部に触れる。
相手の体内に頸力を浸透させる技。
中国武術の発勁ではなく、日本の古武術が生み出した浸透勁。
"無形爆水"
内部からの衝撃で、鼻や口、耳から血を流したブレドは上体を折る。
俺はその首に腕を回し、頸動脈を圧迫して意識を奪った。
竜人であったとしても、息はする。そして、それは頭部にある脳への酸素供給を担うに他ならないのだ。
こうして、真体化した3人との闘いは、俺の圧勝で閉幕した。




