第二章 亜人の国 「魔王と亜神とエージェント⑧」
本日は久々に2話更新します。
2話目。
クソソンが真っ先に跳び出した。
左右に体を振り、向かってくる。
頭部は禿げあがっているが、狼の顔に変化し、体は二回りほど大きく、全身が茶色の毛に覆われている。
何というか、ミノタウロスの狼版といった感じか。二足歩行の形態に違和感を覚える。
そして、動きが速い。
獣人は、普段から人族よりも身体能力に優れている。
狼人であるクソソンは、真体であるワーウルフと化したことで、人の体で狼のスピードに至るようだ。
しかし、その動きは魔人や魔族には劣る。
俺の視界には、クソソンの勝ち誇った狼顔がはっきりと写っていた。
間合いに入り、俺の左側から鋭利な爪で襲いかかってくる。
ドンッ!
カウンターで、クソソンの喉にストレートパンチを放つ。
一瞬、動きを止めたクソソンの顔を両手で掴んだ。
俺はクソソンの背後に隠れ、隙をつこうとしていたネルシャンに、牽制のための一撃を放つ。
「太陽◯!」
クソソンの禿頭を夕日で照らし、反射させる。
クリ···クソソンとは違うキャラの技だが、同じような頭だから、この際何でも良い。
突然の目眩ましに、ネルシャンは瞼を閉じた。
すでに攻撃の体勢に入っていたネルシャンの間合いに、クソソンの体を捩じ込む。
グシャッ!
ネルシャンの大きな拳がクソソンの顔面に直撃し、体ごと吹っ飛んでいく。
何というか、恐ろしく凶悪なネコパンチといったところか。
すぐに間合いを大きく取り、ネルシャンと対峙する。
クソソンとは真逆に、パワー特化したような体。はち切れんばかりの筋肉を持つ猫···いや、虎。
一部の人間に需要はありそうだが、威圧感は半端ない。
ネルシャンは四つ足で構え、上体を落とした。
本気の一撃が来ると思いつつ、隙を見せるべく、ブレドに目をやる。
ティラノサウルスのように二足で立つブレドは、こちらの力を見極めるかのごとく、悠然とかまえていた。
そして、ネルシャンの体はさらに低く沈み、次の瞬間、跳び出すのだった。




