第二章 亜人の国 「魔王と亜神とエージェント⑦」
本日は久々に2話更新します。
まずは1話目。
3人がそれぞれに魔力を練り上げている。
真体···ネルシャンとクソソンは獣化、ブレドは竜化をするらしいが、いまいちイメージがわかない。
今はほぼ人に近い状態だが、二足歩行のままなのか、四つ足になるのか、少し興味深い。竜については知らないが、獣は基本的に四つ足での行動が、最大のポテンシャルを発揮できる体の構造をしている。手先が器用な猿でさえ、駆ける時は四つ足の方が速い。
いずれにしても、戦闘力は格段に上がるらしい。
それを踏まえて、実戦であるならば、俺はこの瞬間に奴らの息の根を止めているだろう。
隙だらけと言うわけではないが、魔力を練る体勢は攻撃が通りやすそうだからだ。
仁王立ちして、両腕を広げ、掌を上に向けている。顔つきは真剣そのもので、周囲の空気にも圧迫感がある。
ただ、俺にはその姿が、築き上げたものをすべて失って、喚き叫んでいるオッサンを連想させた。エージェントの任務で、悪どい商法で成り上がったベンチャー企業のCEOを破綻させた時に、同じような姿で絶望していたのが思い浮かぶ。
そう言えば、そのシーンと合わせて、罪の告白動画をSNSにアップしたら、大炎上をしていたな。
あ、絶対に真似はするなよ。
あれは関係各所に圧力をかけて、司法で裁けないようにしていた奴を、社会的に抹殺するために行った正式な任務だからな。
不用意にSNSに余計なことをアップしたら、大炎上するのは自分自身だぞ。
よろしく頼む。
と、そんなことを考えていると、3人が変身···もとい、真体化した。
獣化した2人は、全身が毛むくじゃら···ああ、クソソンは頭以外···となり、筋骨隆々マッチョに。
竜化したブレドは、体長が3メートルくらいとなり、羽がない地竜の様な姿だ。
共に、口を大きく開けて、威嚇のためか雄叫びをあげている。
周囲のギャラリーは、慣れているのか冷静に観戦しており、その顔や目には期待の色が広がっていた。
そして、対する俺はと言うと、『体が大きくなったが、服はどこにいった?お、なんか周りに布の切れ端のようなものが散乱しているが、もしかして真体を解くと、真っ裸か!?』と、緊張感のないことを考えていた。




