第二章 亜人の国 「エージェントの二つ名⑪」
前半にふざけた2つ名が集中したせいか、後のインパクトが強すぎた。
ブレドは俺への敵愾心を煽られ、ミーキュアは畏怖の念を抱くことになったのだろう。
下手をすると、亜人連合を敵に回して闘うはめに陥る。
ミンはともかく、ミーキュアにはもう少しマシな印象を持ってもらうべきだと思う。残りの2つ名によっては、さらにひどい状態になる可能性もなくはないが···。
「"亜人を解放せし者"!?」
···予想外のものが出た。
「亜人の解放者···タイガが···。」
ミンは顔を紅潮させながら、潤んだ瞳を向けてきた。何を期待しているのだ···。
「あなたは···本当に何者なの?」
ミーキュアが再び問う。
「あと1つだ。先にそれを終わらせよう。」
「···わかったわ。」
ミーキュアが、しぶしぶといった感じで瞳を閉じる。
「!?」
すぐに瞳を見開いたミーキュアが、機械じかけの人形のように、ぎこちない動きで俺を見た。
「どうした?」
「··················。」
表情が固まり、無言のミーキュア。
ちょっと怖いぞ。
「何が見えたの?」
少し焦れたようにミンが聞く。
「···あなたの···正体···。」
「正体?」
「わかったわ···。」
「タイガの正体は何?」
ミンがわくわくしながら聞く。
「···"亜神"。」
は?
「"亜神"?」
「そう···よ。」
「「「·····················。」」」
とんでもない2つ名がきた。
これは、あれだな。
"奴"だ。
テトリアとの闘いで、他の者達を巻き込まないように、転移を依頼したのは確かに俺だ。
だが、なぜこんな離れたところに飛ばされたのか?
「第二のテトリアを作らないように、しばらく離れる。」と言っていたが、今から思えば急すぎた。
神威術で収納された蒼龍や銃器を出すこともなく、まったく知らない土地に放置されたこと事態が不可思議だった。
"亜神"や"魔王"というのは意味がわからないが、"亜人を解放せし者"というのは、使命のようなものなのか?
「いるなら答えろ、神アトレイク。」
俺は何度かそう呼びかけたが、返答はなかった。
あの駄目神め。
また謀に巻き込んだな。
今度は何をさせるつもりだ?




