第二章 亜人の国 「襲撃④」
ティーファ達は散開し、円を描くように不審者との距離を縮めていった。
『立ち上がった···。』
虎狼のメンバー達は、不審者の突然の動きに、気配をさとられたのかと瞬時に動きを止めた。
『ま···丸見えだし···。』
大事なところを隠すこともなく、水場から出てきた不審者は奇妙な動きを始めた。
『な···何あれ!?』
『な···なんか、中央でゆれてるしっ!?』
虎狼のメンバー全員は、不審者の行動を目の当たりにして、冷静さを失いだした。
不審者は一度静止をすると、腰をぐっと横に突き出し、右手を天に伸ばした。その一番高い位置にある右手からは、人差し指がピンっと伸びて、まるで月を指差しているようにも見える。
この世界の者にはわからないだろうが、その姿はまるで1970年代にメガヒットした映画"サタデー·ナ◯ト·フィーバー"の決めポーズに酷似していた。もちろん、本物は丸出しなどしてはいないが···。
『何!?何!?一体、何が起こってるの!?』
『魔法!?呪い!?見た目、超絶変態みたいな!?』
虎狼のメンバーにパニックの渦が押し寄せる。
不審者は、さらに膝の屈伸をやんわりと始め、その動きに合わせて両足の間で何かが揺れを大きくした。
『な、な、な、何ぃ~!?』
『うぎゃ~!?卑猥だしっ!!!』
不審者のストロークがどんどん激しくなり、若い女性だけのメンバーで揃えられた虎狼は、目の前の光景を見て気を失う者、目を背ける者、口から泡を吐く者が相次いだ。
そして···
『···消えた!?』
『いないしっ!?』
気がつくと、不審者は姿を消していた。




