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509話 堕ちた英雄 vs エージェント②

グシャッ!


テトリアの鳩尾あたりに吸い込まれたスラッグ弾は、鈍い音と共にひしゃげて床に落ちた。


硬化魔法···しかも、相当な反応速度だ。


SG-01から発射されるスラッグ弾は、通常よりもかなり威力を高めてある。これが防げる硬化魔法があるなど想定はしていない。


だが、この一発はテトリアを倒すために放った訳ではなかった。


「ぬっ!?」


SG-01の引き金を引くと同時に、気配を置き、SG-01を神威術で収納しつつ、テトリアの背後に回った。


破龍を小さい軌道で振り、テトリアの首筋を斬りつける。


ガキッ!


テトリアは天性の超反応とも言うべき動きで、体を回して背後の破龍を両刃剣で受け止めた。


「はは、油断も隙もないね。」


余裕の表情で軽く防がれてしまったが、これも受け止められるのを目的としている。


「やるなぁ。じゃあ、とことんやり合おうか。」


タイガは不敵に笑った。




「···これは、転移か。なるほどね、君の策にはまったということか。」


剣を受け止められたタイミングで、転移術を行使した。接触していなければ、一緒に転移することができないので、早々に仕掛けたのだ。


場所はどこでも良かった。邪魔が入らず、周囲に犠牲者を出さない場所を神アトレイクにチョイスさせたのだ。


「それで、ここはどこかな?」


「···さあ、知らないな。」


本当に知らなかった。


周囲は深い山中にある高原。ここなら誰かを巻き込むこともないだろう。


「本当に優しいね。他人を巻き込まないように、転移を狙うなんて。でもそういったところが、勝利を逃す要因になるんだよ。」


テトリアの言う通りだ。

余計な優しさは、闘いの邪魔になる。


だが、彼はわかっていない。


転移をした本当の理由を。


エージェントは、結果のみを求められる。経緯がどうであろうとかまわない。


そう、さすがに公共の場で手段を選ばない闘いはできない。闘いに勝利をしても、社会通念上、その後の生活に大きな支障が出てしまうからだ。


テトリアは強い。


五体満足で勝利をするなら、エージェント流を貫くしかないのだ。


死闘に反則などない。


要は、手段を問わずに闘うことのできる閉鎖空間が準備できれば良かったのだ。









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