501話 天剣と呼ばれた男⑩
フェリが操車する馬車でシニタに到着した。今朝の喧騒は終息しているようだ。
移動は転移の方が楽ではあるが、緊急時以外には使わないことにしている。毎回嘔吐くこともあるが、あまり多用すると人間という存在からかけ離れていくのでは?という危惧があった。魔法が存在する世界においても、転移というのは希有な術だ。ただでさえ、天剣などという大それた爵位を与えられそうなのだ。これ以上、変な枠に足を踏み入れたくはない。俺は常識的な人間としての生活をしたいのだ。
合同庁舎に出向くと、アトレイク教の教皇ビルシュがひきつった顔をしていた。
「悪人を粛清するのは良いけど···大聖堂に吊るすのはどうかと思うよ···。」
さすがに教会の責任者として抗議をしたいのだろう。横にいたフェリ達が何のことかと俺の顔を見ていた。
「何のことかわからないが···悪しきものを浄化するのが教会の本分だと思うが?」
「···本当に···神をも恐れぬ所業だよ···。」
『同感だ···。』
何やら、どこぞの神も同調しているが、知ったことではない。むしろ、不適任だと叙爵を諦めてくれ。
「タイガ、また何かやらかしたの?」
パティ君。
俺がいつも何かをやらかしているような言い方は失礼だと思うよ。
「闇ギルドのメンバーが、何十人も大聖堂から吊るされていたんだ···全員が男性としての人生を終了させられて。」
「全裸で吊るされてR18指定にはならなかったから良いんじゃないのか?」
「いや···そういう問題じゃなくて···と言うか、R18って何!?」
闇ギルドのメンバーを大聖堂に吊るしたのは、別に教会やビルシュを困らせようとしたからではない。くだらない事を企んだ輩や、それに続こうとする奴等への牽制や警告が目的だ。闇ギルドへ依頼を出していた貴族達へのペナルティは、個々が所属する国が裁けば良いが、俺に仕向けたイジイベラ兄弟にはしっかりと御礼をしておいた。
兄は熟睡中に股間がクラッシュし、弟は執務机上にひび割れた鉄の玉2つが置いてあるのを見て恐怖したという。
利用価値のない者には実害を、使える奴には精神的な負荷を。
エージェント道における対処法であった。
「また···タイガが悪い顔をしているよ···。」
ふふん、それは誉め言葉として受け取っておくよ。パティ。
その後、シニタに滞在中のイジイベラ兄に襲った悲劇により、股間繋がりで闇ギルドとの関与が立証されることとなる。




