500話 天剣と呼ばれた男⑨
闇ギルドの殲滅は一時間程度で完了した。
魔法は魔力を溜めたり、短いながらも詠唱をつぶやくか、念じる必要がある。しかし、タイムラグのほとんどない銃火器と、魔法を無効果する俺の体質は、闇ギルドの人間が束になってかかってこようが、何の驚異にもならない。
総勢約40名を戦闘不能に陥らせ、最上階にいたギルマスを拘束した。いたぶるつもりはなかったが、激しく抵抗をされたので四肢を砕いている。
依頼主が誰なのか口を割らないので、ゴム弾擬きを股間に撃ち込むと、威力が強すぎたのか30分も悶絶していた。着弾時に、「はうっ!」とあえぎ声を出し、プチッ!という何かが潰れるような音がしたような気がするが、発射の轟音にかき消されたので、気のせいだろう。
守秘義務も大事だろうが、人さらいや殺人などを生業としている非合法な組織の頭なのだ。今日で男を卒業することなど、覚悟の上だろう···たぶん。
そんなこんなで、洗いざらいを白状させた上で、他の罪についても口を割らせた。
命を奪うよりも、正規の手続きで罪が裁かれるように、目立つ街中に吊るすことにした。
気絶から覚めようとしていたギルマス以外の連中の股間にもゴム弾擬きをプレゼントし、複数回に渡って転移でシニタまで運ぶ。
シニタで一番背の高い建物(大聖堂)から太いロープを渡し、闇ギルドのメンバー全員を等間隔に吊るす。さながら、日本各地で行われる鯉のぼり祭の超劣化版といった感じか。禍々しく汚ならしいが。
「私達は闇ギルドです!」という看板を立てておいたので、あとはシニタの治安部隊に任せておくことにした。
翌朝。
街が大騒ぎになっているのを尻目に、元の宿場町に転移してフェリ達を迎えに行った。
闇ギルドが壊滅されたこともそうだが、大聖堂から吊るされていたことが、大きな話題を生んだらしい。
曰く、神罰だと。
曰く、吊るした奴は罰当たりだと。
曰く、闇ギルドの被害者が石を投げつけるかどうかで、神が人の本懐を試しているのだと。
曰く、天剣爵を叙爵する者の仕業だと···。
単に一番高い建物から吊るしただけなのだが、いろんな推測が出ているようだ。まあ、闇ギルドのこれまでの所業が表沙汰になれば、お得意様であった貴族連中は淘汰されていくので、近隣諸国の内政も少しは良いものに変わるかもしれない。
「しかし、暇な奴等が多いな。」
力なく吊るされた奴等の周囲は、かなりの人が見物に訪れていた。
『そなた···大聖堂にあんなことをするとは···相変わらず神を尊ぶ気持ちなど、欠片もないな。』
神アトレイクが呆れたようにつぶやいた。




