498話 天剣と呼ばれた男⑦
「ねえ、助けてっ!」
路地裏から、2人のいかつい男に追われた色っぽいお姉さんが助けを求めてきた。
宿場町で一泊をする予定で、この町に寄った。
皆で食事をして宿屋に行くと、3人部屋が2つしか空いていないという。
「だったら、タイガは私達の部屋で泊まったら良いよ。」
マリアがそんなことを言うが、さすがにそれはマズイだろう。フェリの瞳から、肌に突き刺さる見えない何かが飛んで来ているし。
「いや···ちょっとした作業をしたいから、他の宿屋を探すよ。みんなは先に休んでくれ。朝には迎えに来る。」
そう言ってみんなと別れたのだが、他の宿屋に行く途中でトラブル発生だ。
助けを求めてきたお姉さんは、胸を押しつけるように俺の背中に密着した。
「んだぁ、てめえは!?」
「邪魔するなら、痛い目を見るぞ。」
テンプレだ。
普通なら、こういったイベントは颯爽とお姉さんを助けて、お礼にムフムフな展開になったりするのだろうが、色香をプンプン振り撒くお姉さんは疑ってかかるべきだろう。
強大なストレスにさらされるエージェントには、美人局によるトラップは非常に有効とされていた。もちろん、そんなものには引っ掛からない。俺にはソート·ジャッジメントがある。
「いや、ごめん。急いでいるから。」
そう言って、俺は立ち去ろうとした。
「へ?」
「···い···いやいや、こういった時はすぐに助けるもんだろうが!?」
そんなん知らんし。
って、なぜ野郎2人が焦るかね。自分から何かの罠ってバラしとるがな。
「う~ん···助けても良いけど、俺は加減できないぞ。殴ったら頭が吹っ飛ぶけど、良いのか?」
「「··························。」」
野郎2人は絶句した後に顔を青くし、膝が明らかに震えだしている。背後のお姉さんも、小刻みに震え、腰が引けているようだ。
「俺が誰なのか知っているよな?」
3人の態度は、明らかに俺の素性を知っているものだ。素手で魔族と対等に闘えるスレイヤーだと。
「「「···························。」」」
無言で後退る3人。
「ついでだから、少し話をしようか。無視して逃げたらどうなるか···わかるよね?」
情報収集は大切だ。




