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48話 異世界生活の始まり⑮

ニーナの店を出ると昼時になっていた。


大太刀は砥を入れてくれると言うので今日はそのまま預けてきている。


他にも伸縮式警棒2本とダガーを購入し、そちらは携行していた。




「お腹空いてない?」


「そう言えばもうお昼ね。ランチに行きましょうか。」


フェリは何やら考え事をしているようだったのでリルがそう答えてくれた。


「いろいろとお世話になってるからおごるよ。」


そう言ってターニャの自宅に向かう。





「タイガさん、いらっしゃい。」


ターニャの母親が笑顔で歓迎してくれた。


店内はまだ閑散としている。

今は2組の客しか入っていないが落ち着けばすぐに繁盛するだろう。

料理がおいしいからな。


「昨日はありがとうございました。」


弟くんもカウンターから出てきてお礼を言ってくる。


「ここの料理がおいしいから知り合いを連れて来たんだ。今日のおすすめをお願いしても良いかな?」


「はい。腕によりをかけて作りますよ。」


弟くんは気合い十分だ。


「キレイな女の子達ねぇ。ターニャもうかうかしてられないわぁ。」


母親の方がそんなことを言うので


「仕事仲間ですよ。」


と答えておいた。




「美味しい。」


「うん。こんな良いお店があったんだね。」


海老とマカロニのグラタンと魚のトマト煮込みがテーブルに並んでいた。


リルもフェリも幸せそうに料理の感想を言っている。


こういう時間って何か良い。

エージェントをやっていた時には味わえなかった些細な幸せというやつだろうか。




食後のコーヒーを飲んでいるとやつが来た。


親子に緊張が走る。


貸金業者の金魚のフン。

巨漢くんだ。


「な···。」


俺を見て固まりやがった。

失礼なやつだ。


「何か用かな?」


ずっと固まった状態なので声をかけてみた。


「あ···いや···その···。」


「んー?」


大丈夫か?顔色が死人だぞ。


「しゃ···借金の返済をしたいから連絡が欲しいって言付けがあったから来たんですよ。」


「ふ~ん、で?」


「しゃ··社長からの伝言です。今夜8時に全額を事務所に持って来い···来て欲しいと。」


しゃ···しゃ···って歯の隙間から空気でも漏れてるのか?

それとも顎がしゃくれてるのか?


「わかった。それにしても汗がすごいな。病気か?」


「い···いえ···。」


巨漢くんはそう言うと逃げるように去っていった。


「もしかして例の話?」


「うん。例の話。」


勘の鋭いリルは今の会話で悟ったらしい。







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