472話 エージェントは、相棒と共に無双する⑳
「こんなに短い時間で問題が解消するだなんて···まだ現実だと認識し難いですわ。」
俺はシニタに戻り、サーラの執務室を訪れていた。
「助力を申し出た友人が活躍した。その結果だ。」
「ギルバート卿ですね。現地からも称賛の声が出ていました。聞きしに勝る強さだと。」
ええ、強いですよ。
いろいろとクレイジーでしたがね。
ここに来る前にアッシュはスレイヤーギルドに送り届けた。何度となく転移を繰り返したおかげで、吐き気と頭痛がひどい。
「そうか。本人もそれを聞いたら喜ぶだろう。」
「あなたもですよ。」
「ん?」
「現地の騎士団からの報告では、ギルバート卿は圧倒的な強さで魔族を捩じ伏せた。しかし、タイガ様は、不死身であったと···転移のことも含めて、やはりテトリア様の転生者で間違いないのでしょう。」
「···不死身って?」
「ギルバート卿が放った極大の爆裂魔法に2度も巻き込まれたのに、無傷だったとお聞きしました。」
「·························。」
「転移術に不死身の肉体。テトリア様の転生者と裏付けるに事足りませんわ。」
「テトリアは不死身だったのか?」
「それは···。」
英雄なら話が肥大化して、大袈裟な人物像が独り歩きすることもあるだろう。サーラが言っているのは、そういった類いのものだ。
「俺は不死身じゃない。魔族との闘いで満身創痍になったこともある。万能ではないと思ってくれた方が良い。」
「···おっしゃる通りですね。あなたにだけ依存することのリスクを考えていませんでした。私としたことが、テトリア様が復活されたことに冷静さを欠きました。」
「俺がテトリアの転生者かどうかは、まだわからない。個人的には違うと思っている。」
「!」
サーラは唖然とした。
これまでの見聞やタイガの行いから、彼女の中ではテトリアの転生者であるということが確定事項となりつつあったのだ。




