471話 エージェントは、相棒と共に無双する⑲
「お···おい。あの2人は何かの因縁があるのか?」
「俺に聞くなよ。」
「因縁っていうよりも···アッシュ·フォン·ギルバートが、一方的に殺意を持っているように見えるが···。」
「と言うか···さっきので何で死なないんだ?」
「魔族だぁー!」
「びょ···秒殺した···。」
「ランクSって···人外なのか···。」
後方では、フレトニア王国の騎士団とスレイヤー達が、2人の挙動を目の当たりにして、戦々恐々としていた。
そして、初登場の時は威勢の良かったクレイマンに至っては、他の者の背中に隠れてガクブル状態に陥っている。
「冗談じゃない···あんなのに関わったら、すぐに巻き込まれて死ぬ。近づかないぞ···絶対に···。」
との事。
「2連続とか、ないわマジで···。」
一方、衝撃波に吹っ飛ばされたタイガは、爆心地から数百メートルほど先で、ノロノロと立ち上がった。
アサフェティダの悪臭のせいで気を失うことはなかったが、やはり凄まじく臭いので、鎧をすぐに解除して上衣を脱ぎ捨てた。
剣帯を装備し直したタイガは、視線を巡らせてアッシュを探す。すぐに対象をみつけると、スタスタとそちらに向かって歩きだした。
「タイガ···無事だったか。」
アッシュの第一声である。
本気で心配をしていたと取れる響きだ。
「ずいぶんと高い威力の魔法を撃ったな。」
「ああ。あまり時間をかけるわけにはいかないからな。」
「···魔族をこのまま放置する訳にはいかない。魔法で処理を頼む。」
「了解だ。」
既に絶命した魔族3体を1ヶ所に集め、その血肉が利用されないように処理を行った。
「これで大丈夫だ。」
やがて、魔族の処理が終わり、アッシュが一息ついた。
「お疲れ。これでも食らっとけ。」
バサッ!
「ぐわ···あいたたたたたたたたたたたた···。」
キャロライナ・リーパーの粉をアッシュの顔面にかけた。
お仕置きは必要だ。
「じゃあ、俺たちは国に戻る。」
魔族の処理を近くまで見に来ていた騎士団やスレイヤーにそう告げると、俺は目を押さえて悶絶するアッシュの襟首を掴み、引きずりながらその場を去った。
その様子を見ていた者達は、その後、畏怖の念をこめて2人をこう呼んだと言う。
「滅殺のアッシュ」と「不滅のタイガ」と。




