460話 エージェントは、相棒と共に無双する⑧
「作戦は?」
俺は、並行して疾走するアッシュに問いかけた。
フレトニア王国騎士団本部から通信が入り、俺達が救援に来ることがオフィシャルであると伝えられた。
アッシュと合流した時点で、シニタ中立領のサーラと通信で連絡を取り、ここに来ることについての了承を得ていた。騎士団本部からの連絡が前後したのは、他国のスレイヤーが国境からほど遠い場所に現れることについて、一悶着あったのだろう。同盟国とは言え、騎士団やスレイヤーにも自分達の領分を侵されたくないという、縄張り根性があって然るべきだ。
おそらく、サーラは公爵家から王家を経由して、テトリアの名前を巧みに使い、根回しをしたのだと思う。そう言った交渉事に長けていなければ、大使になどなれるはずがないのだ。
当然、彼女にも何らかの思惑があると考えられる。自身の地位向上か、公爵家の発言力を高めるためかはわからない。正直なところ、政治利用をされたり、テトリアの転生者として周知されることには抵抗がある。だが、そんなことに躊躇して、救える命を救えないのなら、些細な問題として切り捨てることにした。
さすがに、転移できることを情報として広げられると、救援要請に際限がなくなるので、今は他言無用であることを救援の条件としている。
因みに、遠い所へは救援に行かないという意味ではない。案件の切迫度合いによって、優先順位をつけ、それに応じた戦力で対応をしたいと考えている。何せ、身は一つだ。それに、自分が最強だとも自惚れてはいない。状況によって最適な準備を行い、チームとして事にあたるのが定石と思えるからだ。このシステムが構築できれば、場合によっては、同時に複数箇所での救援も不可能ではないと言えるのだ。
「ノープランだ。」
「マジか?」
「マジだ。」
アッシュからの返答を聞く前から、そんな気はしていた。何せ、魔物達の戦力と状況の説明を受けた際に、「厄介なのは、ミノちゃんか。」などと、焼肉ホルモンの部位か?と思える軽い発言をしていたのだ。
ミノちゃんとは、ミノタウロスという牛の頭と、マッチョな人間の体を持つ魔物である。パワーとスピードに優れ、魔法耐性の高い上位種だ。スレイヤーでも、ランクによってはミノタウロス一体と互角に闘うためには、2~3名以上を要すると言う。こいつがおよそ30体。他に、オークやゴブリンが総勢90体いる。
対して、相対している騎士とスレイヤーは総勢50名。約半数が既に戦闘不能に陥り、残りのうち15名が峡谷の入口で、魔物達を抑える壁役となっているらしい。峡谷の間口が狭く、敵が一気に攻め入ることが難しい地形が幸いしているが、消耗がかなり激しいとのことだ。
「俺が突っ込む。アッシュは後ろから最大威力の魔法を放ってくれ。」
「ああ、実はそのつもりだった。おまえに魔法が効かないとはいえ、さすがにそれを口にすると、非道に思えるから黙っていた。」
アッシュは涼しい顔で、そんな発言をした。
「言わなくても、やろうとしている時点で非道だ。むしろ、黙ってやる方が質が悪いぞ。」
「あ···やっぱりそう思う?」
「魔法が効かなくても、その爆風や衝撃で飛んでくる石とか砂が痛い。場合によっては、致命傷を負いかねないからな。」
「そう言えばそうだな。そんなこと、気がつかなかった。」
アッシュはハハハと笑ったが、笑い事じゃないと思うぞ。
ようやく、久々のバトルパート突入です。




