440話 天剣爵位②
「突然呼び立てて、すまなかったね。」
予想外の人物から呼び出しを受けた。
バリエ卿の執務室を訪れたのは、既に面識のある大司教代理だったのだが、最上階最奥の部屋に案内をされて通されると、そこに待っていたのは、金と白のローブと、半円球型のズケット様の帽子を着けた、まだ20代とおぼしき人物だった。
豪華と言うよりも、質実剛健な執務机にいる彼は、目を糸のようにして、ニコニコと微笑んでいる。取り立てて存在感があるわけでもなく、普通の服で街を出歩いていると目立たない存在とも言えた。
ルックスに関して言えば、かなりの容姿端麗。そして、ただ一点、普通とは異なる耳の形状をしていた。
「エルフ?いや、ハーフエルフかな?」
「そうだよ。だから、見た目以上に人生経験は豊富と言っておこう。」
ハーフエルフは、エルフほどではないが寿命が長い。一般的に、数百年から千年と言われている。因みに、ハーフエルフは人間とエルフの混血児を意味し、プライドが高く、異種族への警戒心が強いエルフからは、忌み嫌われる存在と聞く。だったら、人間側はそうではないのかと問われると、そこは人によるだろう。エルフとの接点を持ち、彼らを嫌っている者からすると、同じようなものだとも言えるが、大半の人間はエルフと出会ったことすらない。固定観念なしにつきあえば、それは個人の気質によるとしか言いようがないのだ。
「エルフの血を引く者には初めて会った。噂通り、キレイな顔立ちをしている。」
「はは、素直にありがとうと言っておくよ。ただ、僕は聖職者として、そう言った俗世間の交際は自重をしているからね。君がそのつもりでも、気持ちには答えられないかな。」
···容姿を褒めただけで、なぜゲイにされているのか、意味がわからない。しかも、告白もしてないのに、フラれたぞ。
「大丈夫だ。俺はアブノーマルな趣味を持ってはいない。」
「くすくす···冗談だよ。」
イラッときた。
「なんだ···知り合いの冒険者が、そっちだから紹介をしてあげようと思ったのだが。」
ジェシーが、確かゲイだとうそぶいていたからな。
「あ···いや···遠慮しとくよ···。」
目の前のハーフエルフは、急に焦りだした。
ふん。
人をからかうなら、死ぬ気でやれ。
関西人は甘くはないぞ。




