426話 エージェントの憂鬱⑧
ドスッ!
俺は、不審者の1人に打撃を加えて昏倒させた。
カノンに出会ってから、半日がかりで小さな町に入り、宿を取った後の出来事だ。
尾行をされていたのは大分前から気づいていたが、町に入るまでは遠巻きにされていたので、手出しをしなかった。
宵闇が迫り、辺りは薄暗い。
俺はカノンがシャワーに入ったのを確認してから部屋を出て、宿屋の斜め向かいで監視をする2人に強襲をかけたのだ。
因みにカノンとは同じ部屋だ。
女の子かもしれないので、別の部屋を取ろうとすると、空きがないと言われ、そうなった。カノンは緊張した面持ちだったが、どことなくホッとした様子でもあり、やはり何かを警戒していると感じられた。
「くっ!」
逃げようとしたもう1人に、足払いをかけて倒す。
倒れる寸前で受け身を取ろうとしたので、背中に足を乗せて床に叩きつけた。
「ぐふっ!」
胸を強打し、息を吐き出す。
少し落ち着いた頃合いを見て、尋問を始めた。
「誰を監視している?」
冷たい声音で聞いた。
「な···何のことだ?」
足に体重をのせる。
「別にとぼけてもかまわない。そっちで寝ている奴もいるからな。このまま吐かないのなら、助骨が折れて肺に刺さる。ただそれだけだ。」
足を押し戻そうとする骨の張りがある。助骨とは、内臓を守るためのものだが、一本一本の強度は低い。強い圧迫を加えていけば、やがては折れる。
「や···やめ···。」
少し力を緩める。
「誰を監視している?」
殺気を放ちながら聞いた。
「カ···カノンという···ガキだ···。」
「誰に言われてやっている?」
「···················。」
再度、足に力をこめる。
「ぐ···。」
それを何度か繰り返し、尋問を続けた。
最終的に、口を割らすために激辛スパイスを投入したのは、言うまでもない。




