410話 フラグ·クラッシャー②
「か、か、か、かわいい?」
サキナは顔を真っ赤にして、ぷるぷる震えながら言った。
「ああ、ごめん。かわいいよりも、キレイと言われたい派なのか?」
「そ、そ、そんなことを言って、その···口説くつもり!?」
「口説く?なんで?」
「···あ、あなた、ふざけてるの!?」
サキナは唖然としながらも、からかわれていると思い、感情をあらわにした。
「ふざけてない。本心で言ってる。気にさわったのなら謝るが、容姿や仕草がかわいいと思ったことは事実だ。普段の凛としたサキナはキレイだと思うが、たまに見せる素の笑顔はかわいいと思った。」
「う···。」
サキナは貴族だ。
今でこそ、将校のような日々を送っているが、社交経験も豊富だ。学生時代から、他の貴族と挨拶を交わす度に、「美しくなられた。」などと世辞を言われるのにも慣れている。
もちろん、実際にサキナは麗しい容姿をしている。背は高く、プロポーションもずば抜けたものがある。そして、クールな眼差しと、軍人のような佇まいから、キレイと形容されることはあっても、かわいいなどと言われるのは、幼少の時以来なかった。むしろ、希有な聖霊魔法士であることと、指揮官としての有能さから、どちらかと言えば近づきがたい存在とされている。
「あ···あなたは、そうやっていつも女性を口説くの?」
「そういうのは苦手かな。むしろ、なぜサキナを口説く必要がある?」
「それは···。」
好みの女性を見ると、口説きにかかる男性というのは存在する。サキナ自身にも、過去に身に覚えがある。しつこいので、殴り倒したが···。
「いくらサキナが魅力的でも、他国の辺境伯の御息女を口説くことなんかしない。どんな結果を生むのかくらいは弁えている。」
「···タイガは爵位を持っているの?」
「ただの騎士爵だ。」
「そう···。」
うつむき、何かを考えるサキナ。
何か、嫌な予感がする。
「···タイガ。」
「はい?」
「あれだけ強いのだから、ランクは当然Sよね?」
「うん、まあ···。」
「そっか···ランクSなら、稼ぎは宮廷貴族よりは格段に上ね。」
独り言のようにつぶやくサキナ。
「何の話だ?」
「よし、決めた!」
「何を?」
「気にしなくて良いわ。こっちのことだから。」
そう言いながら、にへら~と笑うサキナに不安が生まれるタイガだった。




