394話 エージェントの遠征②
「消す前に1つ教えろ。貴様は迷うことなく、ここまで来た。何を使った。」
使うと言うのは、魔道具か何かを指すのか?まぁ、どうでもいいことだが。
「おまえの気配がわかる。そういったスキル持ちだからな。」
「そうか。ならば、そのスキルを持ったことを悔やむがいい。」
突然、足下から振動が伝わってきた。瞬時に後ろへ跳ぶ。
地面が隆起して、鋭く尖った杭のような物が突き上がってきた。先ほどいた場所を貫くそれは、岩のような物質でできている。
土属性魔法か。
触れれば魔法を解除することはできるが、岩のような物質は明らかに土の元素で形成されている。それが惰性で迫ってくると、ダメージを負う。
ゴーレムのような個体への魔法を解除する場合、攻撃さえ避けていれば、本体の元素はその場で崩れ去り、こちらへのダメージはない。似たような魔法でも、対処の仕方が異なるのだ。
因みに、土の元素は、そのほとんどが鉄やケイ素、マグネシウムなどが、酸素と結びつくことでできている。ただ、これは元の世界の場合で、こちらではどのような元素構成となっているのか、定かではない。端的に言えば、元素自体が高硬度であるということだ。
「今の一撃を避けたか。だが、これならどうだ。」
相手が口もとを歪めながら、新たな魔法を放ってきた。
先ほどの魔法の応用。
タイガを四方から取り囲むように、地面が隆起する。より鋭利な先端を持った杭状の4連撃。
いや···その4つの杭の間隔から、細い槍のような物が無数に発生し、死角を網羅している。
逃げ場は頭上にしかないが、跳躍程度では間合いを外せず、凌げない。
相手にとって、必殺の術。
魔法を使えないタイガにとって、不可避の状況であった。
しかし···
斬!
勝利を確信し、さらに口もとの歪みを大きくした敵は、首から上を青い稲光により、断ち斬られた。
蒼龍による、居合一閃。
そのまま、何が起こったのかを気づくことなく、絶命した。
傍らに立つタイガは、感情のない冷たい瞳で敵の状態を見定める。やがて、確実にしとめたことを確認した後、蒼龍を払い、そのまま鞘に納めた。




