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38話 異世界生活の始まり⑤

改めて自己紹介をした。

美容師はターニャという名前らしい。


「私もお腹が空いたなぁ。その···ご一緒しても良いですか?」


何か誘ってきた。


「良いよ。」


即答する。


そして同時にソート·ジャッジメントのスキルで悪意がないかを確認した。


ターニャに悪意は感じられない。むしろ純真さの方が勝るようだ。


そして···濃い影が見えた。


深い悩みがある者にスキルを使うと垣間見ることがある影。

命に関わったり、将来が閉ざされたりするほどの重度な悩みに限るのだが···。




エージェントは職務が最優先で、身近に困っている人がいても任務の妨げになるのであれば関わることはご法度とされていた。


だが、ここは違う世界だ。


前の世界でできなかったことを実現するのも良いかもしれない。


無償の人助けと言うやつを。




ターニャに連れられて訪れたのは3階建ての落ち着いた建物にあるレストランだった。


「あ、あの···。実はここ、私の家なんです。」


申し訳なさそうに話すターニャ。


「そうなんだ。レストランをやってるんだね。」


「はい。味は保証できます。」


1階に店舗、2階が居住空間。

3階は外部に階段が付いているので別世帯の住居というところか。


「ただいま。」


ドアを開けたターニャが帰宅のあいさつをしている。


「おかえり。」


店内はテーブル席が4つ、カウンター席が5つとそれほど広くはない。

全体的に木を基調とした清潔で落ち着いた空間と、チェックのテーブルクロスが洒落ている。


「あら、お客様?いらっしいませ。」


ターニャと同色の髪をした40代らしき女性。母親だろう。

カウンターの中にはもう一人、ターニャと雰囲気の似た男性もいた。


「美容室のお客様に来てもらったの。タイガさん、母と弟です。」


「あらあら、それはようこそ。いつも娘がお世話になっています。」


柔和な表情をしている母親だが、目元に浮かんだ疲れは隠せない。


「はじめまして。タイガ·シオタです。ターニャさんにこちらのレストランが美味しいごはんを出すと聞いたので連れてきてもらいました。」


ターニャの母親はふふっと笑い、


「じゃあ、腕によりをかけて作りますね。」


と言ってくれた。







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