383話 偽りの聖者④
それは、大聖堂の裏手にある建物に入り、階段をかけ上がっている最中だった。
先ほどと同じ邪気がソート·ジャッジメントに反応した。
『来るぞ。』
神アトレイクからも、ほぼ同時に警告を出された。
幅2メートル弱くらいの階段。
コの字型のそれは、元の世界では学校などの建物にある階段に酷似している。
踊り場に差し掛かり、前に視線をやると、何かが飛んでくるのが見えた。
扉!?
高さ2メートル半、幅1メートルほどのそれが、通路をふさぐ状態でこちらに迫ってくる。
空気抵抗であまり速度は出ていないが、分厚い木製で、重量はかなりありそうだ。
後方の壁とで、挟み込むつもりか。
タイガはバスタードソードを抜き、扉の左下方を一直線に突いた。束頭に手を置き、力をこめる。
扉が斜めに回転をして、すり抜ける空間ができた。そこから前方に抜け出る。
扉を飛来させていた魔法は霧散し、後ろの壁に派手な音と共にぶち当たり、床に倒れた。
···周到だな。
扉による攻撃を掻い潜った先には、真っ直ぐにのびる通路があったが、その空間には、十をこえる剣や槍が空中に静止して待ち構えていた。
物を飛来させる魔法。
第一の魔人、ブウが使った劣化版と言うべきか。いや···狭い空間で、通路をふさぎながら迫る扉や、複数の刀剣で狙い撃ちをするのは、少しはマシな知性を感じる。バカではない、魔人が残っているのかもしれない。
タイガは、バスタードソードを鞘に納め、両手に警棒を持った。
シャキーン!
警棒の二刀流。
狭い通路では、刀身の長いバスタードソードや蒼龍よりも、効果を発揮する。
次の瞬間、宙に漂う武具のすべてが切っ先をタイガに向けて、飛んできた。
二本の警棒でそれらを凪ぎ払う。
金属同士が弾きあい、高い音色と火花が散る。
飛来する武具をすべて打ち落とすべく、回転を上げて警棒を振るう。接触した武具は、魔法が解けて壁や床に弾き飛ばされ、沈黙したかに見えた。
「!」
落ちた武具は、数秒と経たないうちに、また宙に浮かび上がってきた。
···マジか。
これって、相手の魔力が枯渇するまで、無限ループじゃないのか···。




