表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
382/1622

381話 偽りの聖者②

教会本部の一画に、豪奢な執務室があった。その窓際に配置されている執務机に、恰幅のいい男が座っている。


「大司教様、ご報告致します。」


ノックの後に入ってきた男が、声をかけた。


「なんだ?」


「大聖堂前で、魔人が倒されました。」


抑揚のない声で報告をするのは、表情が全て抜け落ちたような、血の気のない顔の男だ。


「······相手は?」


「なんでやねんの使徒と呼ばれている男ですが、英雄テトリアが転生した姿の可能性があります。」


「···詳しく話してみろ。」


「はい。実は···。」


顔色の悪い男は、大聖堂で起きた経緯を説明した。話を聞くにつれて、大司教の顔は蒼白となり、汗がこめかみをつたう。


「まさか···テトリア様が···。私はすぐにここを出る!お前は、地下の資料などを焼却するのだ。」


微かに震えながら指示を出す大司教に、男は冷たい言葉で返した。


「逃げるおつもりですか?」


右手をゆっくりと上げて、大司教に向ける。


「な···何のつもりだ。」


「おまえの役目は終わった。」


ブンッという不快な音の後に、大司教は床に転げ落ちた。目を見開いたまま、身動き一つしない。


「分不相応な欲にまみれた小心者に、生きる価値などない。」


無表情を崩すことなく、そう呟いた男は、そのまま踵を返して部屋を出て行った。


後には、目や鼻、口から血が流れ出した大司教の亡骸だけが取り残されていた。




『いたぞ。邪悪な気配を持つ存在が。』


神アトレイクが、大司教の執務室で起きた異変に気がついた。


「一瞬だが、俺も感じた。大聖堂の裏手にある、建物の上階だな。」


これまでは、その邪気を感じることはできなかった。何らかの術を使い、その瞬間だけ隠蔽していたものが顕在化したのかもしれない。どちらにせよ、この教会本部に巣くう諸悪の根源は叩かねばならなかった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ