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363話 エージェントの長い1日⑲

斬撃が、止まっている標的と言ってもいい、クリスティーヌの首に容赦なく叩き込まれた。


誰もがそう思った瞬間、剣を振り下ろした聖騎士が静止した。いつの間にか、背の高い修道士が現れて、その手首を掴んだのだ。


そして、すぐにもう一方の拳が鼻の下、人中と呼ばれる急所を殴った。


血や歯を撒き散らしながら聖騎士は崩れ落ちるが、その時点で彼は既に即死していた。人中は、歯茎の上に唇の薄い肉が被さっているだけのため、非常に防御力が弱く、また、激しい衝撃を受けると、呼吸困難や心臓停止を引き起こすのだ。


「お姉ちゃんっ!」


クレアがすぐにクリスティーヌの所に駆け寄り、回復魔法を詠唱する。


タイガは、呆気にとられている他の聖騎士達に歩み寄り、こめかみや耳の乳様突起の急所に一撃を加えていく。近寄ってくるタイガの気配を感じることもなく、聖騎士は全員が絶命した。


気配を置く技法は、このような時にも絶大な効果を発揮する。敵と見なしたからには、当然のごとく容赦をしない。


「タイガさん···。」


クレアのか細い声が聞こえ、改めてクリスティーヌの様態を見たタイガは、絶望的な状況を察した。いかに回復魔法と言えど、死に瀕している者を助けられるほど万能ではない。それが可能であれば、そもそもが治癒修養会など、開催されるわけがないのだ。


「··························。」


何も言えず、クレアの横に付き添った。


「····クレア···それに···タイガ殿···。」


瞳から涙が溢れ出していた。

タイガは、そっとクリスティーヌの涙を指ですくう。


「主は···見ていて···くれたようだ···二人に···もう一度···会うことができ···た···。」


唇が震え、蒼白な顔でそう話すクリスティーヌは、長くは保たないと見てとれた。


「う···お姉ちゃん···。」


嗚咽を漏らすクレアの頬に、ゆっくりと震える手が触れた。


「すま···ない。ずっと···守って···つもりだ···た···。」


体温が薄れていく姉の手に触れられても、クレアは現実を受け入れなかった。駄々をこねる子供のように、ふるふると首をふり、必死に回復魔法を放ち続ける。


共に、涙で顔をくしゃくしゃにした姉妹を見て、タイガはやるせなさを感じていた。

 






めずらしく重たい感じのストーリー展開となりました。笑いに走りすぎていたので···。でも、この救われない状況は···う~ん。

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