335話 エージェントはやはりフラグに気づけない⑥
『さて、どうやって教会本部に潜り込もうか。』
マリア達と連携を取ることで、冒険者である彼女達をカモフラージュとして使うことができる。
もちろん、彼女達の名誉や命を危険にさらさないように、細心の注意を払うつもりだ。
最大の課題は、俺の髪や瞳がこの辺りでは珍しい黒色であるということだ。そして、蒼龍やバスタードソードを、どうやって隠して所持するのか、というところが焦点となる。
「あ、良いことを思いついた!」
これからの行動について考えていると、ティルシーが突然ドヤ顔で手をあげた。
「···嫌な予感しかしないんだが···。」
「···それなりに似合っているよ。」
マリアが優しく声をかけてくる。
「···ありがとう。慰めてくれて···。」
「···············。」
目に包帯を巻き、頭を剃りあげたスキンヘッド。今の俺の姿だ。
ギルドの任務で目を負傷した元冒険者。それが役どころ。確かにこれなら、瞳や髪の色をごまかせるし、同行するマリアたちは元パーティメンバーとして付き添っているという自然な体裁でいられる。
髪はまた生えてくるし、目を包帯で覆っていても、気配で何となく動ける。加えて、両脇からマリアとシェリルが腕を取って補助をしてくれているので、問題は···腕にあたる二人の柔らかな感触を、変な方向に意識しないくらいか。
ああ···やわらけぇぇ···。
「何か鼻息が荒いけど、視界が遮られているのはやっぱり辛い?」
「い···いや···大丈夫だ。」
あかん···不埒な考えは捨てねば、軽蔑されるやんけ。
「なんか、その頭は卑猥だよね。」
前を歩いていたティルシーが、突然振り返って、そんなことを言う。
この案を出したのはおまえやんけ!
「あ、青筋が立った。やっぱ卑猥~。」
ケラケラ笑いながら、ティルシーがトドメをさそうとする。
やめろっ、悪魔かおまえはっ!
両サイドから変な視線を気配で感じる。マリアとシェリルが俺の頭をガン見しているようだ。二人とも、俺の腕を揉むようなしぐさをしだした。なんだ、なんなのだ、このシチュエーションはっ!




