323話 エージェントvs魔人Ⅱ③
魔人の長剣が、袈裟斬りに振り下ろされた。
速い。
バスタードソード。
抜き様に長剣を弾く。
重い。
剣の厚みがそれほどあるわけではない。だが、膂力なのか身体強化なのかはわからないが、並外れたパワーがある。
以前に苦戦をした魔族と、パワーは同等。剣筋のキレとスピードはそれ以上か。
弾かれた勢いで体を横回転させながら、バスタードソードで凪ぎ払う。
また長剣と弾き合う。
パワーは互角。
剣身の長さで、良くも悪くも差が出る。
相手もそれは熟知しており、間合いに入れないように、大振りはしてこない。
少し後退し、相手の間合いから離れた。
「どうした?その間合いでは、貴様の剣は届かないぞ。」
バスタードソードを正眼に構えた。
左手で柄を握り、右手で剣先をコントロールする。右足を少し前に出し、そちらに重心を置く。剣道の構えと酷似していると言えば、わかりやすいか。
剣先を微かに振り、フェイントを入れていく。
かかった。
右に剣先を少し振り、同時に右膝の可動で体をわずかに沈みこませた。ブウツーは、右下からの斬り上げを狙っていると考えたはずだ。
ブウツーが、最小限の動きで反応をした。突きを繰り出してきたのだ。
右手首の返しでバスタードソードの軌道を変える。こちらも最小限の動き。剣道で言う小手。
利き腕が左手だったブウツーの甲を、剣先で斬りつける。
竹刀で試合をしているのではない。真剣で仕合っているのだ。
いかに相手にダメージを与え、無力化するか。その結果が、勝敗であり、生死を分ける。
「ぐっ!」
骨にまで達する感触。
普通なら、剣をまともに扱えなくなるはずだ。




