314話 依頼者タイガ·シオタ⑥
「青い閃光。」
「噂には聞いていたけど···本当だったんだ···。」
「おおーっ!かっちょいい!!」
戦闘が行われている場所を左手に見ながら、右方に旋回をしていた馬車の中では、冒険者の3人がタイガの斬撃に目を奪われていた。
「あっ!囲まれた!!」
「あいつら、盾を使うんだ。」
「やっぱり、高度な訓練を受けた騎士崩れの可能性が高いようね。」
盾を使いこなせる者は少ない。
冒険者やスレイヤーの中にも、パーティーの前衛として、防御の担い手がいないわけではないが、限られていると言って良い。
仲間との連携で、盾を駆使する技術は非常に難易度が高く、一般的には指南役があまり存在しないのだ。
一方、要人や拠点の守護を司る騎士は、日々の訓練で独自の盾術を必修科目として習得する。配属する部隊によって、使用する盾の形状や大きさは異なるのだが、盗賊団が装備している丸盾は、機動力を重視した前線の騎士が使用するケースが多い。
軽く、小型の丸盾は、近接戦闘において邪魔になりにくく、剣との併用で攻防一体の要となるのだ。
ガーン!
バスタードソードに弾き飛ばされた丸盾が、形をひしゃげながら近くの盗賊にぶち当たる。
「ウゲッ!」
木製ではあるが、外枠は鉄でできているため、その破壊力は相当なものである。直撃した本人は即他界した。
タイガはそのまま右手を振り下ろす。
シャキーン!
伸長した特殊警棒が、盾を飛ばされた盗賊の首筋に叩き込まれた。
相手は声もなく、地面に突っ伏す。
間をおかずに近くの別の盗賊に前蹴りを入れて、盾ごとふっ飛ばす。後方の二人が巻き添えとなって一緒に倒れこんだ。
その間隙をついて、バスタードソードを剣帯に納める。
良い機会だった。
王都で仕入れたアレを使ってやろう。
タイガは悪い顔をしていた。




