30話 模擬戦⑨ vsアッシュ·フォン·ギルバート
衝撃的だった。
フェリだけではない。
リルも観戦しているギャラリーも意識を取り戻した認定官達···ついでにおっさん顔のラルフも。
ここにいる全員が次元の違う闘いに釘付けになっていた。
「何なの···アッシュは本気だし、それに互角に渡り合えるタイガも···。」
「眼で追うのがしんどいくらいのスピード···あれは!?」
一度打ち合った後に再び炎撃を連弾で放つアッシュ。
それに対抗するタイガは体全体を使ったフォームから警棒をものすごい勢いで振り回し、風を圧縮した連撃を放つ。
出現した炎撃のすべてに風撃斬が命中し、魔法そのものを打ち消す。
そしてまだ止まらない!
警棒から生み出される風撃は炎撃を消滅させてもなお発生しアッシュを襲う。
「マジか···風撃無双をあんな警棒で···一度見ただけなのに。」
認定官の一人がショックで呆けたような表情になっていた。
「嘘だろ···。」
一方、ラルフはかつて見たことがない本気のアッシュと、それに対等に渡り合うタイガに鼻水を出しながら畏怖の念を抱いていた。
「無理だ···あんな奴等を相手になんかできない···。」
涙眼で頭を抱え込んだ。
襲い来る無数の風撃無双にアッシュは剣で対抗していた。向かってくる風撃を剣の斬撃で相殺する。
かつて認定官との模擬戦で経験したことのある風撃無双。
しかしタイガの警棒から放たれるそれは、見た目こそは酷似していたが威力は段違いのものがあった。
『そもそも剣とは違って太くて短い警棒で風撃を出せるなんてどんだけチートなんだよ!』
剣は刃先が薄い分、キレのある斬撃を出しやすい。風撃斬はその斬撃を突き詰めることで完成する。
それに比べて太くて短い警棒は斬撃などという概念とは無縁なものだ。とうてい模倣するなんてレベルではない。
先程までとは違い、アッシュにはすでに精神的な余裕がなかった。
一撃一撃に集中して捌かなければ呑み込まれる。
そう感じた瞬間、アッシュは自分に迫る気配に気がついた。
風撃の対処に意識を反らせ、自らの気配をぼやけさせたタイガが間合いを詰めてくる。
風撃無双はタイガにとって必勝の技ではない。
アッシュの誤算はここに露呈した。
『なっ!風撃無双が牽制だと!?』
戦闘シーンの表現って難しいなぁ。
まだまだ勉強が必要です。




