301話 依頼者ソウリュウ③
またか···。
アトレイク教会本部に向かう道中で、土地勘がなく、余計な時間を費やしそうになった。
詳しい地図を入手できないまま、大まかな方角を進んできたが、あまり進路をずれると検討違いの場所に行ってしまう。
そう考えて、少し大きな都市の冒険者ギルドで、道案内を依頼しようと思ったのだ。
ギルドの入り口は建付けが悪いのか、開けた瞬間に少し軋むような音がした。エージェントの習性で音が鳴らないように開け、ギルドホールで依頼受付のブースを探していると視線を感じた。
そちらを見ると、目があったのは軍服の美女二人。笑いかけてみると、周りにいた冒険者達にからまれるという、意味のわからない状況になっている。
なんだ?
冒険者ギルドは、初めて来た依頼人にからむのが決まりなのか?
しかも模擬戦?
意味がわからん。
「さぁ、どれでも好きな得物を使え。」
建物の裏手にある、修練場らしき広場に連れて行かれた。7人で取り囲まれたので、抵抗もせずについてきたが、本当にやるのね、模擬戦。
「···じゃあ、これで。」
そう言いながら、俺は蒼龍の柄を握った。
「·····いっ!?いやいやいやいや。それは真剣だろっ!!」
「ダメなのか?」
「ダメに決まってるだろっ!」
何でも良いって言ったじゃん。
「わかった。じゃあ、こっちにしとく。」
「て···てめぇ···それも真剣じゃねぇか!もう一本のゴツい剣を抜こうとするんじゃねぇよ!!」
反対側のバスタードソードを手にしたが、やっぱりダメなようだ。
「何でも良いって言ったのに···。」
「模擬戦用の武器の中から選ぶのが常識だろうがっ!」
「そうなのか?俺の故郷では、模擬戦と言えば真剣勝負だったぞ。」
「···どこの無法地帯出身だよ!」
「マジだぞ。小さい時に模擬戦で斬られた傷痕もあるぞ。」
「み···見せなくていい!何でベルトを外そうとしてんだ!!」
「大腿部だから脱がなきゃ見えないだろ?」
「だから、見ねーよっ!」
ぷっ!
少し離れた所で、やり取りを見ていたマリアとシェリルは、お互いの目線を交わしてから吹き出した。
「な···何、あいつ···くくく···。」
「違う意味でヤバい奴かも··ぷぷっ···。」
そんな二人を見たタイガは、にんまりと笑うのだった。




