27話 模擬戦⑥ vsラスト認定官
重苦しい圧から逃げるように認定官は正面から剣撃を加えてきた。
間合いは詰められていない。
「風撃斬!」とか叫んでいる。
技の名前か?
およそ7メートルの距離だが、剣圧による風が空気を裂きタイガに迫る。
おっ!?
中距離からの風撃斬。
元ランクSスレイヤーの認定官が得意とする技。
風属性魔法からヒントを得て体得した技だ。
鋭い剣撃で空気を圧縮し、敵を襲う中距離攻撃。
力ではなく、剣筋のキレの鋭さでしか作り出せない。
ニヤリと笑った認定官の顔が俺の何かを刺激してイラっする。
なんだあのドヤ顔は。
サラッと体をずらして風撃斬を避けた俺は今の技を分析する。
あれって魔法じゃないよな。
詠唱なかったし。
結構使えるかもしれない。
「くっ!ならば連続ならどうだ!!」
簡単にかわされたのが余程悔しかったのか、認定官は眼を真っ赤にして連弾を放ってきた。
「風撃無双っ!」
おぉ~、名前はカッコいいかも。
ただ叫ぶのは恥ずかしいぞ。
先ほどの風撃斬が連続で繰り出され、襲いかかってくる。
小さな動きでかわしながら技を観察する。
出し方は何となく理解ができた。
あ、この技の弱点がわかった。
直線的な攻撃だから見切りやすいんだ。
俺は相手の攻撃の間隙を見つけて警棒を地面をすくうように振り抜いた。
そうあれだ。
警棒で転がっていた石を打ち、認定官の額にあてる。
「あぅっ!」
元ランクSスレイヤーは膝から崩れ落ちた。
完勝。
あまり実りのない模擬戦だと思っていたが最後の風撃斬と風撃無双?は参考になった。
牽制くらいには使えそうだから今度試してみよっと。
こうして元ランクSスレイヤーが血のにじむような修練で体得した技「風撃斬&風撃無双」は、ただの牽制技として軽く扱われて模倣されることとなった。




