258話 帰路⑨
「ケリー、OKだ。」
その言葉と共にゴーレムが消えた。砂状となり風化したのだ。
「!」
俺はクレア·ベーブスの所に行った。
彼女はゴーレムが出現してから、ずっと恐怖だけを感じていた。サキナ·ダレシアとは違い、何も知らなかったのだろう。
「怖い思いをさせてすまない。もう大丈夫だから。」
そっと頬を伝った涙を拭いてあげた。
「ひっく···ひっく···うわぁ~ん!」
子供のように泣き出して抱きついてきた。真実を暴こうと考えて罠をしかけたが、無実の彼女がトラウマになったらどうしようかと思いながら、頭を優しく撫でて落ち着かせる。
「···何?どういうことっ!?」
サキナ·ダレシアが上体を上げて詰問口調で問いかけてきた。
「おかしいと感じていた。君はこの2人を巻き込んで、俺達スレイヤーを排除しようとしたのかな?」
顔を真っ赤にして絶句するサキナ。
「君が主犯とされたら罪は重いんじゃないのか?大公閣下の依頼を利用して、スレイヤー十数人と、同僚を罠に嵌めて命を奪おうとしたんだ。」
「ち···違う。私は使命を果たしただけよ!2人の身に危険が及ぶなんて聞いてない!!」
サキナ·ダレシアは必死の表情で弁解を始めた。
「どういうことなんだ!?」
俺とサキナのやり取りに、デュエル·ソルバが割って入った。
「ソルバ司祭、信じてください!私はあなた方を危険な目に遭わせるつもりはありませんでした!!」
「落ち着きなさい。そして真実を話すのだ。このままでは君は重罪に問われるかもしれない。」
「そんな···。」
サキナ·ダレシアは血の気が引いた表情となり、小刻みに震えていた。
「大丈夫だ。君は敬虔なシスターとしての使命を果たしたのだろう?それならば、その使命について話をしてくれれば良い。」
「···············。」
「何も語らないのでは、君が主犯として反社会的な行動を取ったという事実だけが残る。しかし、使命としての行動であったのなら、その責任は命じた者にあるはずだ。君が盲目的な信仰から今回の件に関わったのであれば、それに関して個人としての罪は不問になるかもしれない。」
さすが神父と言うべきだろう。
説法に長けている。サキナ·ダレシアはしばらく無言だったが、意を決したようにポツリポツリと語りだしたのだった。




