250話 帰路①
王都を出て、何事もなく2日目の夕方を迎えた。
昨夜は交易都市で一泊をしたが、今夜は途中で野宿の予定だ。大型の馬車が二台あるので、寝る場所は屋内みたいなものだが。
精霊魔法で疾走する馬車は、馬単体と比べるとスピードでは劣る。しかし、予想以上の快適性と機動力を見せており、既に7分の2程の距離を消化していた。
精霊魔法を発動し続けているセイルとマルモアに、適度に休憩を取ってもらっていても、この速度なのである。交代要員がいれば、大人数の移動手段として、これ以上のものはないだろう。
「2人とも大丈夫か?」
「うん。ちょっと眠いかな。」
精霊魔法で馬車を走らせるということは、絶えず魔力を流し続けるということだ。これはマラソンをしていることに近い。
個別の魔力量にもよるが、過度な魔力の放出は体への負担が少なくはないのだ。疲労で眠くなって当然と言える。
「でも、こういうのって魔力の鍛練に近いよね。魔力量が増えそう。」
「本当だね。移動しながら、鍛練もできるって良いかも。」
セイルもマルモアも前向きだ。
今回の王都訪問では出会いに恵まれ、良い人材をスカウトすることができた。
「じゃあ、みんなで夜営の準備をしてくれないか。俺は夕食を作る。」
「了解。」
王都で購入したキャンプ用品の中からトライポッドを出す。これは鉄製の棒を、三脚のような形に組んで使う。三本の棒の接点からチェーンを垂らして鍋を吊ると、囲炉裏の自在鉤のようになる。
シンプルな構造だが、夜営で料理をする時に非常に使い勝手が良いのだ。
拾ってきた枯れ木や古木を組んで、火をつけ、鍋に水を入れておく。火力が増して、水が沸騰するまでの間に野菜を大きめに切っていった。
ニンジン、ジャガイモ、玉葱、干し肉を鍋に投入。
煮たったら灰汁をとり、しばらく煮る。
火の勢いを弱めに調整して、さらに煮る。
また灰汁をとり、ひたすら煮る。
野菜に串を刺して、ほどよい柔らかさになったので、スパイスを適量入れていき、カレーが完成した。




